セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.546『閉店セール』

政治・経済

2015-02-16

 “いつ行っても「閉店セール」を開催していて,そんでもって,いつまで経っても閉店しない店ってどうなってるの?”─。先ごろ,立教大学法学部の学生さんたちが,都内で「閉店セール」を開催中の衣料品店9軒をまわって実態調査を行なったというリポートをNHKの報道番組でみた。確かに,いつ行っても「閉店売り尽くし!」のPOPが踊っている店ってあるよな~。で,調査の結果,9軒中4軒は本当に閉店したが,5軒はその後も「閉店セール」が続いていたことが判明した。さらに“閉店”の中身について調べてみたら,営業を継続していた店で目立ったのは「改装閉店セール」であった。店を運営する会社側の説明では「改装閉店の場合の閉店期間は,最短で一日ということもあり,客が閉店したことに気づかない可能性はある」とのこと。つまり,閉店はなかば方便というわけだ。

 そこまで“閉店”を乱用するのは,やはり,消費者心理に訴える効果があるからだろう。事実,「閉店セール」と聞くとどう感じるかというアンケートをしたところ,100人のうち64%が「普段より買いたくなる」と答えたそうだ。実際,ある店では定価1万円のバッグを3千円の閉店特価で販売したが,同じ品物が1年後も3千円で売られていた。だが,こうした売り方には問題がある。定価より安い価格で一定期間以上売り続けると,その定価には実態がなく「見せ掛けの割引」とみなされ,景品表示法に違反するおそれがあるのだ。今回調査を行なった学生たちは,「閉店しない閉店セールは,最後の機会を強調することで購買意欲をむやみにあおり,いま買わないと損をするという誤った印象を消費者に与える恐れがある」として,消費者庁に対し,悪質業者の監視を行うとともに,「閉店セール」の意味やセール期間に関して指針を示すよう求めた。

 一方,閉店するわけでもないのに,年中閉店セール並みの価格で販売を続ける業界もある。然り,我がGS業界である。先月末には,レギュラーガソリンの仕入れ価格が100円割れ寸前まで行ったかと思いきや,原油価格はV字回復で,2月半ばまでに7~8円も反騰した。ところが,その上がり続けている最中に,愛知県の各所では,値下げ合戦が行なわれ,日進市でも“これって外税価格?”と疑いたくなるような価格看板が林立した。それらの看板は,「見せ掛け」などではなく,正真正銘の割引価格だ。消費者を欺こうなどというやましい魂胆は微塵もない。中には,電子プリカに一定額をチャージし続けないと割引率が下がるとか,百円分を給油せずにリライトプリカで返すといった,眉をひそめたくなるような方式のものもあるが,大半の表示価格は,悲しいほどの正直価格だ。

 先週後半から,各地でようやく市況是正が始まったようだが,ガソリン価格検索サイト「gogo.gs」を見ると,今週に入ってもまだ110円台で販売する猛者たちが上位にずらりとランキングされている。繰り返すが,外税価格ではない。恐らく,一般のGS業者にはない特別な仕入れルートがあるのだろう。あるいは,先月末までの安いガソリンをたんまり買い込んであるのか。ランキングされている上位20位の約7割が元売系列店であることを考えると,我々PBにはない,事後調整という恩恵を被っているとしか思えない。いずれにせよ,そんな価格でこの先も売り続ければ,近い将来“閉店”することになってしまうだろう。

 16日に発表された,昨年10~12月のGDP(国内総生産)の速報値は,年率換算で+2.2%と,3期ぶりにプラスとなったが,事前の民間予測を下回るものだった。その原因は,言うまでもなくGDPの6割を占める個人消費が相変わらず伸び悩んでいるからだ。消費者の財布の紐はまだまだ固い。GSのみならず,小売業界全般においては,「閉店覚悟」の価格競争がまだまだ続くだろう。

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