セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.548『大塚家具』

政治・経済

2015-03-12

 老舗家具大手の大塚家具で,創業家父娘の対立が泥沼化している。創業者で会長である父親を社長である娘が解任しようとしたところ,筆頭株主である父親は会社に対し自らの取締役再任と娘の解任を求める株主提案を突きつけるなど,「やられたら,やりかえす」異常な事態へと発展,両者は今月27日に開かれる株主総会に向けて過半数の賛成を得るべく,委任状争奪戦(プロキシーファイト)を繰り広げることとなった。

 いわゆる“骨肉の争い”というやつなのだが,テレビや新聞によると,今回の内紛は単なる親子喧嘩ではなく,経営路線の違いによるものだという。大塚家具は,店舗の入り口で顧客に名前や住所を書かせて登録し,店員がついてまわり,まるで百貨店の得意先部のような接客を売りにして成長した。しかし,そのような販売方法はもはや時代に合わないと感じた娘は,リーズナブルな商品も並べつつ,カジュアルで気軽に入れる店作りを進めるようになる。こうした経営改革は箪笥職人から一代で上場企業を築き上げた父にとっては,我慢できなかったようだ。

 高級路線か庶民路線か─単純化すれば,そういう図式になるのだろうが,何もどちらか一本に絞らなくても,全国に十数か所のショールームを展開する会社なのだから,二つの業態それぞれに分社化して経営しても良さそうにも思うのだが。ちょうど,同じGS運営会社がセルフサービスとフルサービスの両方を運営するように。

 それにしても,平均接客時間が2時間を超え,平均客単価が30万円を超えるとされる大塚家具のビジネスモデルは,やはり庶民感覚からすると時代遅れと言わざる を得ない。ダイニングテーブルをちょっと見に行こうとしただけなのに,店員に付きまとわれて,あれこれと“ライフスタイル”の提案をされるというのは,心理的に抵抗を感じる。庶民路線のニトリやイケアが業績を伸ばす中,大塚家具が低迷にあえいでいるのもむべなるかなと思う。

 GSに移し変えて考えてみれば,やはりフルサービスは,古いビジネスモデルとして敬遠され,今後も淘汰されていくだろう。もちろん中には,熟練スタッフによるトータルカーサービスを実践し,収益をあげているフルGSもあるにはあるが,ガソリンを千円分だけ給油しに行っただけなのに,オイルだ,タイヤだ,ワックス洗車だと勧められるのは,親切と感じるより,迷惑と感じる客のほうが多いだろう。「そんなクズ客は来てもらわなくても結構」という“高級路線”を突き進むのであれば構わないが。

 大塚家具が会員制による顧客の囲い込みを図ったように,多くのGSも現金会員制を導入して来店客を固定化させようとしている。しかし,結局は価格値引きの方便として用いられているだけで,付加価値はほとんど生み出されず,むしろ収益を圧迫する“劇薬”のようになってしまっている。信販会社からのインセンティブを原資とした,クレジット会員によるさらなる値引き価格も盛んに掲出されているが,獲得キャンペーンが終わったあとは,手数料という負荷に苦しむことになる。手間隙かけた仕組みを作っても,所詮,ガソリンを安く売る以外に能がないというのが実態だ。

 家具業界については門外漢なので,大塚家具の路線対立については,実際のところどちらが正しいのかわからない。しかし,構造不況に陥ったGS業界において,ローコストセルフシステムの導入こそが生き残るための手だてと叫び続けてきた私としては,やはり,椅子一脚からでも気軽に買える店作りを目指すお嬢様の方に肩入れしたくなる。

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