セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.550『戦艦「武蔵」発見セリ』

GS業界・セルフシステム

2015-03-16

 『NHK総合「NEWSWEB」は今月3日の放送で,旧日本軍の戦艦「武蔵」とみられる沈没艦を伝えたニュースの際,武蔵の写真として使ったものが「大和」の写真だったと訂正し,おわびした。視聴者の指摘で発覚した。問題の写真は,呉海軍工廠が撮影した「大和」の写真が左右反転したもので,過去のNHKの番組で使われており, 鎌倉千秋アナウンサーは,「放送する際に,あらためて十分確認すべきでした。大変失礼いたしました」と頭を下げた』─3月14日付「スポニチアネックス」。

 “どうでもいいだろ,「大和」も「武蔵」も似たようなものじゃねえか”なんて言ったら,ミリタリーオタク,戦艦フェチの方々からお叱りを受けるかもしれないが,とにかく,冒頭の記事が,鎌倉アナの顔写真を掲載し,まるで彼女がやらかした失態のように報じているのだけは看過できない。ミスをしたのはNHKの番組制作スタッフだし,「武蔵」と「大和」の違いなんてマニアックな人間にしかわからないのだから,鎌倉アナを責めるのは筋違いのうえの無理筋というべきものだ。私のご贔屓の鎌倉アナをいじめないでくれ!

 閑話休題。「大和」に比べて影の薄い「武蔵」にいまごろになってスポットライトが当てられたのは,マイクロソフトの共同創業者で大富豪のポール・アレン氏が,私財を投じての探査によってフィリピンの海底に沈んでいた「武蔵」の残骸を発見したからだ。大日本帝国海軍が建造した最後の戦艦である「武蔵」は,「大和」の姉妹艦として1942年8月に就役したが,そのころには「大艦巨砲時代」は終焉を迎えていた。海戦の主役は航空機と潜水艦に移っており,大和型戦艦は,連合艦隊にとって時代遅れのお荷物となっていたのだ。結局,「武蔵」は何ら華々しい戦果を挙げることもなく,レイテ沖海戦で米軍機のなぶり殺しの如き猛攻撃によって撃沈されてしまった。

 常々このコラムで,大型セルフスタンドを,時代錯誤の「大和」や「武蔵」に例えてきたが,GS業界ではいまだ大艦巨砲主義がまかり通っているようだ。とにかくGSはでっかくなければイカンというわけで,千坪を超える大型店舗が業界のスタンダードとなっている。しかし,「大和」や「武蔵」が,航空機の攻撃に対処するため,後付で対空機関砲をハリネズミのように搭載せざるを得なかったように,近年,大型セルフスタンドの多くも,ガソリン販売の減少傾向によるマイナスをカバーすべく,中古車販売やレンタカーサービス,手洗い洗車コーナーなどを設けるなど,バージョンアップを図っている。

 さもありなん。大和型戦艦は燃料だけで駆逐艦3隻分を食ううえ,メンテナンスにも莫大なコストがかかったが,GSもまた店舗が大きければ大きいほど,毎日の運営コストも大きくなる。手ををこまねいていては,その巨大さゆえに浸水(赤字)の量も深刻なものとなる。儲かりそうなことは手当たり次第にやってみようというわけだが,戦局を挽回させるような有効な手段とはなっていないようだ。

 また,ある元売は,社有GSを全面改装するにあたり,運営店に『改装後もガソリン販売は赤字の見通しだが,新たに併設するコンビニの利益でトントンになるはず』と説明したそうな。コンビニの人間が言うのならいざ知らず,元売の人間がそんなことを言うのだから呆れてしまう。司令部から『この艦はもはや攻撃力はほとんどないが,とりあえず大きいから何とか浮かんでいられると思う』と言われて,乗組員になりたいと思う者がいるだろうか。大戦末期,勝ち目のない水上特攻を敢行せざるを得なかった大型戦艦と,採算無視の価格看板を出して営業を続ける巨艦GSは,どうしても私の目にはダブってしまうのだ。

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