セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.552『マッサン』

エンタメ・スポーツ

2015-03-30

 『3月28日に放送が終了したNHK連続テレビ小説「マッサン」の初回から最終回までの期間平均視聴率が,関東地区で21.1%(関西地区22.2%)だったことが,ビデオリサーチの調べで分かった。前作「花子とアン」の22.6%,「ごちそうさん」の22.4%には及ばなかったが,最近10年では3番目の数字となった』─3月30日付「日刊スポーツ」

 「マッサン」はニッカウヰスキーの創業者・竹鶴政孝とその妻・リタをモデルにした物語で,「朝ドラ」史上初の外国人女優(シャーロット・ケイト・フォックス)がヒロインを演じることでも話題になった。私は,「おしん・少女編」を除けば,「朝ドラ」をまったく評価しない人間だが,毎朝,一所懸命に見ている方も大勢おられることだろう。私の家内も「今度の朝ドラはおもしろうそうだ」と始めのころから見ていたので,私も時々見ていたが,相変わらずステレオタイプの登場人物,予定調和のストーリー,リアリティのないセリフの,三拍子そろった,まさに“三級酒”の味わいのドラマであった。

 とはいえ,そこはやはり「朝ドラ」である。「マッサン」効果で,にわかにウイスキーブームとなり,ニッカウヰスキーの業績にも,昨年の9~11月の3ヶ月間で,前年比146%の“特需”をもたらしたそうだ。これを機に,日本のウイスキー需要が拡大することになれば,竹鶴マッサンの願いが,思いがけないかたちで成就することになりそうだ。

 昭和初期,広島県の老舗の造り酒屋の跡取り息子が,ウイスキーを作りたいと言い出す。当然,家族も従業員も猛反対する。独立して夢をかなえようと奮闘するが,世間からまったく相手にされない。まるで,セルフスタンドの歴史を見ているかのようだ。1998年に日本でセルフ給油が認可された直後でも,GS業界のほとんどの人たちは,“西洋の方式が日本で通用するはずがない”と高をくくっていた。ところが,セルフにするとガソリンがそれまでの何倍も売れるようになる。一転,元売各社がこぞって参入し今日に至った。しかし,私に言わせれば,いまのセルフはセルフじゃない。いまだ,セルフシステムが,ガソリンをたくさん売るための,すなわち“安売りするための道具”という位置付けだからだ。

 北海道・余市で念願の和製ウイスキーの製造に成功するも,さっぱり売れず,倒産寸前の矢先,太平洋戦争の勃発に伴い,海軍から大量の受注を得たニッカは危機を脱する。商売は軌道に乗ったものの,自分のウイスキーが,人々を癒したり喜ばせたりするものではなく,戦闘に駆り立てる“スピリット”として用いられるのを見て,マッサンはさぞかし辛かったことだろう。

 本来のセルフシステムも,安売り戦争の道具としてではなく,GSのコスト軽減や,人手不足問題の緩和のために活用されるべきものだ。今日の状況を見る限り,セルフがGS業界の発展と安定に貢献しているとは言い難い。無論,資本主義経済において,健全かつ公正な競争は大いに望ましいことだが,業界誌に目を落とせば,毎日のように,元売販社の大型セルフ店が,一般特約店の仕入れ価格を下回る価格で販売して,地場GSを破壊せしめんとしている。“こげぇなことやっとったら日本のGS業界はむちゃくちゃになってまうわい!”

 ニッカウヰスキーの各種製品のなかで,私のお気に入りの一品は,マッサンがリタと死別したあと,悲しみの淵から立ち上がり,宮城県宮城町に作った蒸留所で誕生したシングルモルト「宮城峡」。柔らかい味わいと,こくが楽しめる。ロックがお勧め。復興支援の思いも込めて是非ご賞味あれ。

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