セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.557『売れ残りガソリン』

GS業界・セルフシステム

2015-05-11

 大型連休が終わり,「セルフスタンド日進東」の2週間のガソリンの売れ行きを振り返ると,前半はかろうじて昨年実績を上回ったものの,後半は失速。結局,トータルで昨年比ほぼ横ばいに終わった。とはいえ,昨年の同じ時期には,1㍑あたり25~30円も高く販売していたことを考えると,事実上減販ということだ。おまけに,連休に入る直前,どうにか130円台半ばまで是正された市況も,ずるずる下がって現在120円台後半となっている。仕入れ価格は上がっているというのに!

 2週間ぶりのコラムをこんなボヤキで始めなければならないのも切ないが,実際のところ,ガソリンの減販傾向は確実に進行していると感じる。そんな折,11日付web版「読売新聞」の紙面にこんな記事を見つけた。

 『石油元売りの系列スタンドが,量販店の「安売り攻勢」に悲鳴を上げている。系列店側は,元売りが売れ残ったガソリンを割安な価格で,大量に系列以外に卸していると不満を募らす。人口減少や車の燃費向上で逆風にさらされているスタンドの経営が,いっそう苦しくなる恐れがある。

 「近隣の数十店が潰れかねない」─東北地方のスタンドの間では,米国の会員制量販店「コストコ」が山形県上山市に今年夏にオープンする店舗に大型スタンドを併設することに警戒感が強まっている。元売りから売れ残ったガソリンなどを割安に仕入れるとみられる。今年夏以降,富山県射水市などでもスタンド併設型の出店を計画している』─。

 業界人からすれば“いまさら何を”とも思える記事だが,この中で,「売れ残ったガソリン」という言葉が繰り返されているけれど,これは誤解を生じさせると思う。「売れ残ったガソリン」が安値で流通するのが困るというのなら,売れ残らないように系列店が頑張ればいいではないか,ということになる。しかし,現実はそうではない。系列店に卸されるガソリンと「売れ残り品」と称して卸されるガソリンとの価格差はブランド力や営業努力で拮抗できるような次元のものではない。むしろ,量販店向けの薄い利幅を補うべく,系列店の価格を高くしているといっても良い。“はじめに量販店ありき”なのだ。

 山形県に進出する「コストコ」のGSは,16台同時給油のできる,超大型店舗だそうだ。元売や商社からすれば,小さな系列店を数十件も抱えてお守りをするより,一件の大口客に,同じかそれ以上の量を卸すほうが,コストがかからず,楽に決まっている。どちらが元売にとって“良いお客”といえるか。経済原則から行けば至極当たり前のことなのだ。こんな店舗が進出してきたら,零細店は閉店準備に入るほか手はない。

 しかし,「コストコ」のようなカテゴリーキラーの進出を待たずとも,すでに元売による系列店の淘汰は進められている。元売100㌫出資の子会社GSが,この連休中も各地で安売り攻勢を掛けたことで,打撃を被った系列店は少なくないだろう。我々PB店は“親方元売”の店なんだからしゃあないな,と苦々しく感じながらも諦めるしかないのだが,同じマークでありながら,自分たちへの卸価格よりも安い価格で販売する子会社を目の当たりにする系列店主の憤懣たるやいかばかりであろう。もし,前述の新聞記事のように「売れ残ったガソリン」があるとすれば,それは量販店や子会社が売ってもなお捌き切れないガソリンが,系列店に高値で売りつけられているのではないかとさえ思えてくる。PB店々主の我々も苦しいが,元売から係る屈辱を受けねばならない系列店々主には,同情の念を禁じえない。

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