セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.564『ギリシャ危機』

社会・国際

2015-06-29

 旧約聖書の「箴言」に,「借りる者は貸す人の僕となる」という言葉がある。銀行が追加支援を行なう条件として,貸付先の企業に経営陣の刷新や大規模なリストラを迫る有様を見ると,約2800年前に記されたこの言葉がいまも真実であることを思い知らされる。ところが,これが国家レベルの話になると,一筋縄ではいかない。

 6月27日,EUの財務相会合で,ギリシャが求めた6月末の支援期限の延長を拒否することが決まり,前日にはギリシャ問題が進展するのではとの楽観から,株価が18年半ぶりの水準にまで回復した東京株式市場は,29日には600円近くも下落してしまった。ギリシャは,あす(30日)までに国際通貨基金(IMF)に約15億ユーロ(約2100億円)の債務を返済しなければならないのだが,このまま行けば債務不履行(デフォルト)に陥り,世界経済に混乱をきたすのは必至と見られている。

 ところで,ギリシャの首相や財務相は,借金返済をさらに延長してもらうようEU諸国に土下座しているのかと思いきやそうではない。「貸す人の僕」になるどころか,7月5日に実施する国民投票において,EU諸国が求めている構造改革の実施を拒否するよう国民に働きかける一方で,ロシアへの接近を謀りEUからの離脱をちらつかせているという始末だから,貸した側からすれば,これほどたちの悪い相手はなかろう。

 厳しい経営環境にあえぐ我々GS業界も,お金の苦労は絶えない。原則現金前払いで商品代を払っているGS経営者の中には,資金繰りに明け暮れる毎日を送っておられる方も少なくないのでは。うっかり代金の振り込みを忘れていた(あるいは足りなかった)ため,タンクローリーが荷下ろしせずに帰ってしまったなんていう話も聞く。そうなっては大変と,来る日も来る日も回収と入金を繰り返しているGS経営者は,右サイドから送られてきたボール(売上金)をすぐに左サイド(支払い)へとまわしながら,ゴールのないフィールドをいつまでも突進し続けるラグビー選手のようだ。ホント切ない。

 元売系列の特約・販売店の中には,商品代を掛け買いしているところもあるが,そちらはそちらで業転価格との差があまりに大きく,苦慮していると聞く。「来月の支払日までにまけてくれないとデフォルトしちゃうぞ」なんて脅したら少しは“対応”してくれるかしらん。あるいは,“系列離脱”をちらつかせれば,飴玉の1個や2個ぐらいはもらえるのかな。やってみないと分からないが,どんな結果になっても知らないよ。

 それにしても,ギリシャの財政はどうしてそんなに悪化してしまったのだろう。2004年に開催されたアテネ五輪を挙げる人もいるが,問題はそれだけではなく,長年に渡る公共部門の肥大化が主たる原因だとされている。ギリシャは人口10人あたり一人が公務員という「公務員大国」。(日本は30人に一人ぐらい) しかも,給料は民間給与の1.5倍。おまけに年金支給額は賃金水準の7割超。今回の結果は,なるべくしてなったことだと断ずる人は少なくない。

 我々零細GS経営者の目には,巨額の設備費や販促費を投じて運営している元売販社や大手特約店のGSは,ほとんど公共事業のように見える。不安定な経済状況のもとで,いまだに販売量を追求する姿勢を改めない元売の“僕”となって採算無視の価格で売り続けるそれらの会社は,遠くない将来に危機的な状況に陥るのではないだろうか。「大丈夫,俺たちには元売が付いているんだから」なんて構えていてはいけない。何せ,かつては世界強国として君臨していた国家が,いまや破綻しようとしているのだから。

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