セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.565『不穏な空気』

オピニオン

2015-07-06

 先週に引き続き,まずはギリシャ危機について。今月5日に,EU諸国の求める緊縮策受け入れの是非を問う国民投票が行なわれ,結果は60㌫を超える大差で「NO」。“債権者”であるEU諸国は頭を抱えている。油業報知新聞で健筆を振るう関匡氏は,このギリシャの開き直りを「自由化前に一部の有力大手特約店がやっていた(代金)勝手払いを連想させる」と述べていた。最近元売は,机上で決めた指標が市場価格とあまりにも乖離しているため事後調整に応じているそうだから,勝手払いも交渉術の一つとして復活するかもしれない。そうなった時,元売はいかなる態度に出るだろうか…。

 ギリシャの経済破綻の病巣は,手厚い年金制度にあるとされる。現役世代の7~8割ももらえるというのだから,“巨額の借金をしながら贅沢するなんておかしい。削れよ”と言われても仕方ない。しかし,生活水準が下がることを歓迎する人などいるはずがない。財政健全化を唱えて,国民に窮乏を強いてばかりいると,「年金が少ない」と不満を募らせた老人が新幹線で焼身自殺して大混乱を起こしたように,社会不安が増大する恐れがある。

 先月30日に起きたあの事件は,ガソリンが大きな破壊力を持つ危険物であることを改めて思い知らせることとなった。この手の事件が起こると,ガソリンの入手経路,すなわち,どこのGSが売ったかが,業界では話題になる。しかし,いかなる理由であれガソリンを自動車や二輪車以外に給油してはならないと法律で定めない限り,いや,そうしたとしても,やはりガソリンによる犯罪は今後も起きるだろう。真に恐れるべきは,格差や腐敗によって生じる不穏な世の中の“空気”だ。

 犯罪つながりで話題を変えるなら,今月4日に奈良県香芝市リサイクルショップで何者かに連れ去られた小6の女の子は,きのう(5日)の夜,無事保護され,26歳の男が逮捕された。わずか一日半でのスピード解決だが,ご両親や関係者にとっては,この間生きた心地がしなかっただろう。私の店の前も毎日,登下校する小学生たちが歩いて行くが,“地域の目”の一つとして見守ってあげなければならないなと思う。変な人に声を掛けられたらすぐにうちの店に駆け込むんだよ。

 奈良県で起きた犯罪をもう一つ。橿原市内のGSが,7百回以上に渡って軽油に灯油を混ぜた不正軽油約730万リットルを密造・販売したとの疑いで,50歳の男性経営者が逮捕された。この類の犯罪も年中行事のように発生する。そして,多くの場合,PBスタンド経営者。おかげで,まっとうな商売をしているPBスタンドまで,“混ぜ物の油を売っている”という差別的な目で見られてしまう。こんな輩はGS業界から永久追放してもらいたい。

 “永久追放”といえば,2013年3月に,ギリシャの国内サッカーリーグの試合で,ヨルゴス・カティディスという選手が,決勝ゴールを決めたあと観客に向かって右手を挙げる“ナチ式敬礼”をして,同国代表チームから永久追放されるという事件があった。しかし,今日のギリシャ国民の悲憤を見ていると,かつて“ヴェルサイユ条約にNOと言おう”と訴えて,国民の圧倒的支持を得たヒトラーのような人物が現れても不思議ではない気がする。世界はくすぶり続ける火山のように,不穏な噴煙と振動を繰り返している。

 さて,サッカーつながりで締めくくろうと思えば,「なでしこジャパン」ということになるのだろうが(本日決勝戦で大敗),あいにくサッカーには全然興味がない。それよりも,まるでどこかの業界のように,全チームが貯金無し,または借金状態に陥っているという“不穏な”セ・リーグの行方の方が気になる。

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