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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.572『ユダヤの発想』

社会・国際

2015-08-24

 第二次世界大戦が終結してから今年で70年が経った。日本も米英連合国に宣戦布告するという無謀な行為によって,310万人もの犠牲者を出すこととなった。NHKは,「戦後70年特集」と銘打って先の大戦を様々な角度から取材・検証した特集番組を連日放映し,私もほぼ全部を視聴したが,柔軟性を欠き,独善的で利己的な考えを持った軍指導者たちが戦禍を拡大させていった罪はあまりにも大きいとの感想を抱いた。

 日本陸海軍が破滅した道程については,いまも研究・分析が盛んになされ,新しい書籍が次々に出版されている。その失敗から教訓を学び取り,会社経営に生かそうとする経営者は少なくない。かくいう私も,身の丈にあった設備投資をすることや,精神主義に基づく経営をしないことなどを,かつてのエリートたちの失敗から学び,指針としている。その結果,派手な戦果を求めることなく,15年間に及ぶ持久戦を続けている。

 しかし,第二次世界大戦における最大の悲劇はと問われれば,軍隊も武器も持たない無抵抗の民族が600万人も殺戮されたことだろう。対戦初期,ヨーロッパ大陸をまたたくまに支配下に置いたヒトラーは,自らの“もうひとつの戦争”を遂行する。それが,ユダヤ民族の絶滅作戦であった。ユダヤ民族が受けた迫害はあまりに過酷で,人間の価値には上下があるという思想が,いかに恐ろしい結果をもたらすかを証明したと言える。

 そもそも,なぜユダヤ民族がそれほどの仕打ちを受けなければならなかったのか。それには,歴史的・宗教的事情が複雑に絡んでおり,簡単には説明できそうもない。そのうえで,ひとつ挙げるならば,ユダヤ民族がとりわけ経済の分野で非常に優れていたことに対する,異邦人たちのねたみのようなものがあったのではないだろうか。

 紀元前607年にバビロニア帝国によってユダ王国が滅ぼされてから,1948年のイスラエル建国までの2,555年間,ユダヤ民族は国家も,国土も,資源も持たず100ヶ所以上の国や地域に散らばって生活せざるを得なかった。自らもユダヤ教徒である弁護士の石角莞爾氏は,このことがユダヤ民族に特異な発想をもたらしたと,雑誌『プレジデント』の取材に対して答えている。

 「国土を追われたユダヤ人は,そうした環境が当たり前だったので,最初から発想がグローバルです。それに対して日本は島国で,国内に安定的な市場があるので,発想もローカルになります。たとえば日本では,セルフ給油の前にガソリンの種類や支払い方法などを画面で選択します。複雑な手順でサービスを提供するのは,日本の教育程度がよく,誰でも画面に書かれたことを理解できるからです。一方,アメリカの場合はノズルを差しこんだだけで給油できます。グローバルになりたければ,シンプルにせざるを得ない」─。

 アメリカにおけるユダヤ人は,人口の2㌫を占めるに過ぎないが,世界的に成功した米企業の創業者には,ユダヤ人の名がずらりと並んでいる。ロスチャイルド,ロックフェラー,ゲティ等,世界の石油市場を支配する一族も皆ユダヤ系だ。これらは偶然ではなく,激動の歴史の中で磨き上げられてきたグローバルな発想による成果なのだろう。無駄なことにはお金を遣わず,あらゆるものを疑い,常識にとらわれず,他人の評価も気にしない─。東洋の島国に閉じこもって暮らす民族とは対照的な経営感覚。恐らく,最初にセルフスタンドを考案したもユダヤ人だと思う。

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