セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.574『コストコ』

GS業界・セルフシステム

2015-09-07

 いま,日本のガソリンスタンド業界で最も熱い話題と言えば,やはり“コストコ”ではないだろうか。米国に本社を置き,世界各地に750ヶ所を越える店舗を展開する会員制小売量販チェーンで,日本でも現在23店舗が営業している。会社の正式名称は「コストコ・ホールセール」。社名に“ホールセール=大量販売”をうたうだけあって,管理や陳列にかかるコストなどを徹底的に抑えるために,商品を大量に仕入れたうえ,入荷したままの状態でパレットに乗せて大型の倉庫に並べて販売する。どの商品も一般小売価格よりはるかに安く,日々の“コストコ価格”をツィートするのが流行っているらしい。

 そんな「コストコ」が,今年の8月に山形県上山市と富山県射水市の店舗敷地内にセルフスタンドを矢継ぎ早にオープンさせた。9月5日現在,レギュラーガソリンの価格は上山店が113円,射水店が121円(いずれも内税)となっており,周辺のGSがこれに対抗するかたちで地域の市況を陥没させている。元売子会社や大手量販店はともかく,中小零細店にとっては,まともに戦える相手ではない。まさに恐怖のどん底状態と言えよう。

 しかし,このような業態は,いまになって始まったことではない。そもそも“ホールセール”のスタイルは,流通大手「ダイエー」が,1992年に「コウズ」という会社を立ち上げ,会員制による大型店舗で営業するという,いまの「コストコ」とほとんど同じシステムを立ち上げている。しかし「コウズ」はわずか10年で撤退を余儀なくされる。その理由として,日本の取引形態や高い家賃がネックとなり欧米程の低価格を実現できなかった事や,効率性を最優先させた味気の無い売り場が日本の消費者のニーズにあわなかった事などが挙げられているが,何より時代を先取りしすぎたのではないかと思う。

 その「ダイエー」は,1996年には流通大手として初めて,長野県松本市の店舗敷地内にGSを建設し,周辺GSのみならず,日本中のGS経営者を震え上がらせた。しかし,これも恐れていたほどの破壊力をもたらすことなく,いまは「ディーエムガスステーション」という三菱商事の子会社として全国で20店舗程度が営業しているに過ぎない。その後も,似たような形態のGSが全国各地に作られてきたものの,やはり業界の勢力図を塗り替えるほどの出来事とはならなかった。GS経営者たちが“異業種参入なんて大したことねぇな”と思っていたところへ,このたび,満を持して「コストコ」登場となったわけだ。

 「コストコ」GSは,言うまでもなくセルフだが,現金での給油さえできない。4,000円の年会費を払って会員証を手に入れたうえで,コストコ指定のクレジットカードか,店内で課金した電子プリカのどちらかで決済することになっている。私が常々言っている事でもあるが,セルフシステムの要諦は代金決済,とりわけ釣り銭をどのように返金するかにあるのだが,コストコシステムは,現金のやりとりをしないのだから,システムのトラブルは一般のセルフシステムと比べて格段に少なくなるうえ,メンテナンスやセキュリティのコストもはるかに低く抑えられる。さすが,ローコスト販売の雄だけに,ツボを心得ている。現金払いに慣れている日本のドライバーは多少の不便さを感じるかもしれないが,あとは他社が追従できない安値で文字通り“ホールセール”するだけだ。

 今後,「コストコ」はGS併設店舗を増やしてゆく意向とのことだが,東海地方でも新規に2店舗を計画中とのこと。しかし,その前に,2013年にオープン前の時点で5万人以上の会員を集めるという世界記録(!)を打ち立てた,愛知県常滑市の中部空港店の敷地内に,国内3店舗目となるGSを現在建設中だ。営業開始は11月とのこと。常滑市とその周辺のGS経営者の心中は察するに余りある…。

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