セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.575『軽減税率』

政治・経済

2015-09-14

 2017年4月から消費税を現行8㌫から10㌫に引き上げる際に導入される予定の「軽減税率」。酒類を除く飲食料品の軽減分について,マイナンバー方式を活用した還付方式で対応するという財務省案がこのほど明らかになった。たとえば,軽減税率を2㌫とした場合,消費者が1,000円の飲食料品を買う際,店側にマイナンバーカードを提示し,その購入情報を専用の端末機でICチップに書き込んでもらう。その場では,一たん10%の消費税を含む1,100円を支払うが,そのうちの2%分20円が還付金として消費者が事前に登録した金融機関の口座に後日振り込まれるということになるそうだ。所得に関係なくすべての人が還付を受けられるが,還付の年間上限額が設定されるらしく,財務省案では4,000円とのことだ。

 財務省は,対象品を販売する事業者が品物ごとに税率を分けて扱う必要がないため,事業者の負担が少なくて済むとしているが,インターネット上では,「ポイントカード出してクレジットカード出してマイナンバーカード出して…わけわからん」とか,「全国すべての食料品店にカード読取端末を設置させるのは不可能」など,否定的な意見が多いという。与党として安全保障関連法案に加担したことへの批難を,この軽減税率制度の導入で払拭しようともくろんでいた公明党からも,「痛税感が減らない」,「高齢者や子供にしわ寄せが行きかねない」との批判が続出している。

 とにかく,まだどんなものを軽減税率対商品とすべきかすらはっきり決まったわけではなく,様々な意見が飛び交っている状態だ。飲食料品と言ってもピンからキリまである。100㌘300円のシイタケと100㌘1万円のマツタケを同じ税率とするのは,所得の低い人たちへの生活支援を目的とした軽減税率の本来の趣旨に沿っているといえるだろうか。

 仮に,対象品目に一般市民からの要望が強いガソリンを入れた場合,現行の内税表示では分かりにくいとして,外税表示にさせられるのではないか。また,全国すべてのGSにマイナンバーカードを読み取らせる端末を設置させることが本当にできるのか。セルフスタンドの場合,外接機にマイナンバーカードを読み取らせるカードリーダーを取り付けたうえで,給油後に“マイナンバーカードをお持ちの方は挿入してください”というようなボイスガイダンス機能を付加する必要があるだろう。そうしたハード,ソフト両面での改造コストはだれが負担しなければならないのか。

 まあ,そんな心配などせずとも,ガソリンは対象品目とはなるまい。そもそも,本体価格の半分近くが税金だというのに,丸々消費税をかけておいて,そのうちの数㌫をまけてやると言ったところで,どれほどの有り難味があるといえるのか。それに,全国の至る所で,いまだに消費税を5㌫と勘違いしているんじゃないかと思えるようなGS経営者がうようよいるから,これ以上軽減する必要はないと思う。

 それにしても,財務省が出したこの案には,どんな“意図”が隠されているのだろう,と私なりに考えてみた。まず,これから普及を図るマイナンバーカード。取得は任意となっているが,このカードが無いと軽減税率の恩恵が受けられないとなれば,国民は持たざるを得ない状況となる。また,カードを紛失したり忘れたりする人や,還付申請をしなかったりする人たちが相当数見込まれるので,税収が減るのをかなり防ぐこともできる。そして何よりも,中国経済の減速などの影響で景気後退がささやかれているこの時期に案を出すことで,世間の耳目を軽減税率制度のあり方に向けさせ,10㌫への増税を“規定路線”に乗せてしまうおうとしているのではないか。つくづく日本の役人はアタマが良いなと感心してしまう。

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