セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.579『総活躍』

政治・経済

2015-10-12

 第3次安倍改造内閣が2015年10月7日に発足し,安倍首相は“一億総活躍社会”の実現を新たな政策目標に掲げ,そのための担当大臣も任命された。ネット上では「一億総活躍担当大臣」の略称をどうするかが話題になっていた。『もし「一億相」にしたら,いままでで一番すごいネーミングの大臣だよね』とか『(任命された)加藤大臣は拉致問題担当も兼務しているから,短縮すると「一億総拉致相」だな』など,読んでいてプッと吹き出しそうなコメントが多かった。やはり,このネーミング,ちょっと違和感があると感じている人が多いのだろう。

 私の知人は『なんだか,昔の“一億玉砕”みたいな響きがあってコワイ。安倍政権だから余計に』と言っていた。確かに,「一億」という言葉は,国民をひとかたまりで見ているような感じを受けるし,個別性や多様性がなおざりにされるのではないかという不安を抱かせるのだろう。しかしまあ,そんなことを心配するのは取越し苦労というものだろう。そもそも“一億総活躍社会”なるものがどんなものなのか,これからまとめるとのことだし,どんなに魅力的な政策を盛り込んだとしても,それを実現させ,名称のとおり,老若男女すべての国民が「活躍」できる社会を成就させるなんて,いかなる国家にも不可能である。

 “一億総活躍社会”というスローガンの中で,政府がもっとも重要視しているワードは,やはり「一億」という数値ではないだろうか。総務省によると昨年10月1日現在の日本の人口(在日外国人も含む)は前年比21万5000人(0.17%)減の1億2708万3000人で,4年連続で減少した。15~64歳の現役世代である生産年齢人口は116万人減の7785万人。一方,65歳以上は110万2000人増の3300万人となり,初めて0~14歳の年少人口(1623万3000人)の2倍を超え,世界のどの国も経験したことのない少子高齢化社会が進行中なのだ。

 為政者たちが人口減少と高齢化による急速な国力の低下をいかに恐れているかは,先日,福山雅治と吹石一恵の結婚についてコメントを求められた官房長官が,「この結婚を機に,ママさんたちが一緒に子供を産みたいとか,そういう形で国家に貢献してくれたらいいなと思っています。たくさん産んで下さい」と口走ったことからも伝わってくる。「産めよ,増えよ,地に満ちよ」というのが,彼らが国民に求める第一のことなのだろう。

 実際,活況を呈する自動車業界だが,国内販売台数は減少を続けており,ここへきて,頼みの軽自動車まで減少傾向に陥っている。先日,過去最高益(1100億円)の決算発表を行なったファースト“ユニクロ”リテイリング社も,国内市場では鈍化が顕著となり,株価は下がってしまった。このまま人口減少が続けば,日本ではあらゆるものの売れ行きが落ちてゆくことは容易に予測できる。もちろんガソリンも。

 1994年度の6万421件をピークに,20年後の2014年度には3万3510件まで“少子化”が進んだガソリンスタンド業界は,このまま行けばGS経営者が「総うつ」状態に陥ってしまうような有様である。市場がどんどん縮小しているのに,前年比100㌫以上の計画なんかぶち上げたって,現場からは「総スカン」を喰らうだけだ。にもかかわらず,なおも商圏内の客を「総獲り」しようなどと目論んで,量販店は採算度外視の価格競争を続け,疲弊を極めようとしている。こんな業界に,今後「コストコ」のようなカテゴリーキラーがTPPの大波に乗って続々と参入して「総攻撃」をかけてくるようなことがあれば,我々は「総崩れ」になってしまうかもしれない。

コラム一覧へ戻る

ページトップへ