セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.582『自動自動車』

社会・国際

2015-11-02

 『日産自動車は31日,一般道路を利用した市街地での自動運転のテスト走行を報道機関に公開した。テスト走行は電気自動車「リーフ」を改造した専用車両を使用し,東京・江東で開催中の東京モーターショーの開場周辺の一般道路約17キロメートルを自動運転で走行した。

 17キロメートルのコースのうち,左折や合流などでドライバーが5~6度ハンドルを操作して方向を修正する場面があった。ブレーキを踏んだ場面はなかった。路上の白線が薄くなった部分ではクルマがセンターラインを認識しにくいなど,インフラでも課題が見えた。

 ドライバーを務めた自動運転技術部門の飯島徹也部長は「テスト走行を繰り返すことで人工知能の判断のレベルが高まり,運転の精度が上がる」と説明。また,対向車が多い交差点での右折は現在の技術では難しいことも明らかにした』─10月31日付「日本経済新聞」。

 まだまだ,一般道で安全走行するには,クリアしなければならない問題が幾つもありそうだが,それでも,自動車を自動で運転できる時代がそこまでやってきたという事実はだれも否定できないだろう。日産もトヨタも,2020年には市街地での走行が可能な自動運転車を発売する計画だという。あと5年。あっという間だ。

 “自動自動車”が普及するようになれば,「運転手」という職業がなくなってしまう。宅配サービスのように,運転するだけでなく商品を戸口まで届ける必要がある場合は,人手が必要かもしれないが,その場合の彼らの主な仕事は,運転ではなく,営業になるだろう。一方,人や物をただ運ぶだけの,トラックやバス・タクシー運転手は,完全に失業することになるかもしれない。ただし,そんなことになれば,業界団体は黙っていないだろう。

 19世紀後半,英国で「赤旗法」なる法律が施行された期間がある。蒸気自動車が路上を走り始めた頃,仕事を奪われることを恐れた馬車業者たちが政府に圧力をかけて制定させたもので,自動車の最高速度を極めて低く抑え(郊外で時速6.4キロ,街中で3.2キロ)させたうえ,事故防止を口実に赤い旗を振る先導者を走らせることを義務付けたのである。このため,産業革命の本家でありながら,英国の自動車産業は他国に大きく遅れをとることとなった。

 既得権益を守るために技術革新を妨げるということは,日本でも珍しいことではない。1998年にようやくガソリンスタンドのセルフ給油が認められるようになったが,安全性の確保を名目に,設備や運用において過度の規制強化がなされたため,本来の目的であるコスト削減効果が抑えられてしまい,GS経営の圧迫に拍車をかけることになった。GSは業界や役所の予想を超える速度で減り続け,GS過疎という新たな問題が生まれるまでになっている。

 それはともかく,自動だろうが手動だろうが,自動車がガソリンで走ることには変わりはないのだから,この問題は,GS業界にはさほど大きな影響はないだろう,と考えている人がいるとすれば,いささか考えが甘いかもしれない。世界の自動車メーカーが,自動自動車をEVで実験していることを見過ごしてはいけない。自動運転に際して,エンジンなら燃料タンクや変速機が必要となるが,電気モーターにはそれが必要ない。つまり,EVのほうが人工知能の指示に対する反応が速く,はるかに自動運転に適しているということになる。それに,自動車自身がガソリンを補給するよりも,充電するほうが,施設はずっと安価で簡易に設置できる。

 そうやって考えてゆくと,自動自動車の普及が加速するということは,電気自動車の普及が加速することを意味しており,GS業界の消滅を加速することにつながっていると言えそうだ。これからまだまだGS店舗を展開しようとしている剛毅な経営者もおられるかもしれないが,技術革新と規制緩和の潮流をよく見きわめて進めてゆくべきだろう。

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