セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.584『戦争か平和か』

GS業界・セルフシステム

2015-11-16

 『JXホールディングスは16日,東燃ゼネラル石油との統合報道について,厳しい経営環境のもとで経営上の選択肢は常に検討しているが,決定した事実はないと述べた。16日付の日経新聞朝刊は,JXが東燃ゼネラルと経営統合に向けた交渉に入ったと報じた。 東燃ゼネラルも同日,他社との提携などさまざまな選択肢を模索しているが,現段階で具体的に発表できることはなく,何かを決定した事実もない,とのコメントを発表した』─11月16日「ロイター」。

 経営統合が実現すればJXは製油所の統廃合で設備過剰の解消に乗り出すと見られている。JXは国内7ヶ所,東燃ゼネラルは同4ヶ所に製油所を持っているが,これらを統廃合して一体的に運営することで,経済産業省が「エネルギー供給構造高度化法」で2017年3月末を期限として求めている製油所の能力削減に対応する狙いもある。つまり,各々の得意分野の相乗効果を図るというよりも,コスト削減を一層加速させるための統合と言えそうだ。

 原油価格の落ち込みと国内需要の低迷で,JXは今年3月期の連結業績が約1,500億円の赤字。東燃ゼネラルも14年12月期に約730億円の赤字となっている。しかしこの結果については,石油元売には70日分の備蓄義務があり,高い時期に買った原油の評価損で赤字になっただけで,それを除けば黒字だという“注釈”が付け加えられてきた。しかし,天候や為替や相場などの外的要因を除外した決算など,業界内では通用しても,投資家には通用しない。より強いコスト体質を築いて配当する以外に道はないのだ。

 今回の統合(ってまだ両社とも認めていないけれど)は,概ね予想されていたことなので,さほど驚かれていないようだが,それでも,実現すれば国内のガソリン販売量の約半分を占め,先に合併が発表された出光と昭和シェルの2倍近い規模を誇るガリバー企業の誕生となるのだから,GS業界はざわめいている。

 希望的観測を述べるなら,元売各社が,海外事業や電力小売などの成長分野への投資資金を稼ぎ出すためには一にも二にも合理化という機運となり,過当競争を引き起こしているGSチェーンを整理・縮小させ,下流部門の利益率が高まってゆくかもしれない。

 一方,悲観的観測を述べるなら,二大勢力に分かれた石油元売が,ますますシェアにこだわるようになり,各地で激しい販売競争(つまり価格競争)が激化させるかもしれない。だれが考えても馬鹿げた展開だが,人間がすることは往々にしてそちらの方向に発展することが多い。

 話は少々脱線するが,先月25日にNHKで放映された「新・映像の世紀」の第1回は,1914年に勃発した第一次世界大戦が,その後の百年の人類の歴史にいかに忌まわしい影響をもたらしたかを思い知らせるものだった。当時のヨーロッパ列強諸国は,大英帝国とドイツ帝国を中心とする二つの陣営に分かれ,互いに領土拡張の機会をうかがっていた。セルビア人青年によるオーストリア皇太子夫妻の暗殺に端を発した国際問題は,ヨーロッパの覇権を握ろうとする諸国家のなかば意地と面子の張り合いで早期和解の道が閉ざされ,大災厄へと発展していった。

 これから先,国内GS業界が,二つの大きなグループに分かれることになるとすれば,戦争か平和のいずれかが待ち受けていることだろう。もし,二大元売が,百年前の列強諸国の指導者と同じように“領土拡大”を叫ぶことになれば,GS業界はいよいよ“最終戦争”の様相を呈することになろう。そして,焦土と化したヨーロッパ諸国に代わって,アメリカが世界の覇権を握ったように,どの陣営にも属さない異業種が,GS業界の新しい支配者として君臨するかもしれない。いささか,時代がかった例えかもしれないが,いつの時代も,どんな社会でも,強くて大きな者が考えることは似たようなものであり,しがないGS経営者はただ息を潜め,身を竦ませながら平和を祈るのみである。

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