セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.590『宗教と石油』

GS業界・セルフシステム

2016-01-05

 新年早々世界に新たな危機が生じつつある。イスラム教スンニ派が国民の大多数を占めるサウジアラビアは,2日,サウジのシーア派指導者を含む47人をテロに関与したとして処刑したと発表した。これに対し,シーア派の大国イランの国民は強く反発,首都テヘランにあるサウジアラビア大使館を群集が襲撃し,火を放つなどした。すると,サウジは3日,イランとの外交関係を断絶すると発表。サウジに滞在するイラン外交官全員に対し,48時間以内に国外に出るよう要求した。イラン駐在のサウジ外交官は,既に退去したという。

 もし,両国の緊張関係が長引くようなことになると,中東各地で激化する両派の対立に一層拍車が掛かるのは避けられず,過激派組織「イスラム国」の台頭で混迷する中東情勢は,ますます混迷の度合いを深めてゆくことになりそうだ。そして,サウジとイランの間には,ペルシャ湾が横たわっている。両国間で武力衝突が起きようものなら,早速,日本も集団的自衛権を行使せざるを得ない状況となるかもしれない。さらには,今後イスラム教に対する嫌悪感がキリスト教世界,とりわけ超大国アメリカにおいて蔓延し,あのドナルド・トランプがまさかの第45代大統領になるようなことはあるまいか─。

 そもそもイスラム教におけるスンニ派とシーア派の違いとは何か。イスラム教は610年にムハンマドによってはじめられた宗教である。イスラム教世界は政教一致の体制をとっており,その指導者はカリフと呼ばれているが,ムハンマド没後,4代目のカリフまでは争いごとはありながらも分裂することはなかった。 しかし,それ以後,カリフはムハンマドの子孫であるべきだと主張する派(シーア派)と,子孫の中からではなく,話し合いによって皆から選ばれたものがカリフとなるべきと主張する派(スンニ派)に分裂したというのが,ざっくりとした歴史である。

 しかし,現在両派が対立しているのは,そのような宗教信条によるものというよりはむしろ,イスラム教世界において,どちらが政治的・経済的な主導権を握るかということのようだ。それはすなわち,石油市場の主導権を握ることを意味している。つまり利権争いというわけ。中東地域に石油が湧き出る限り,この争いはいつまでも続くことだろう。

 一方,年末年始の日進市は,だれも得する者がいない宗派間対立が繰り広げられていた。4日現在,シェル系大手と出光系販社が,101円(そこからさらに割引あり)の看板を掲げ,EM系やPBのGSもこれに呼応し,100円割れ必至の情勢となっている。テツ&トモに歌わせれば「消費税除けば 業転仕入価格よりも安く売ってる奴 ナンデダロ~♪」という感じ。系列店はPBを“テロ国家”呼ばわりしてきたが,やっていることは同じかもっとひどい。

 シェルと出光は,まもなく同じ宗派になるというのに,なぜこんな無益な競争をするのか。いや,だからこそ,いまのうちに主導権を握ろうと販売合戦を繰り広げているのだろうか。EM系もまもなく改宗を余儀なくされる。いや,教義を変えなければならないのはJXの側かもしれない。事後調整も支払サイトも廃止といった,エクソン流の“戒律”が適用されることになったら,JX系特約・販売店の中には経営に窮するところも出てくるのではないか。

 いずれにせよ,どこの系列店も愚かな安売りなんかやっている場合ではない。もはや少々安く売ったところで,減販の潮流を変えることなどできない。“最近,ガソリン安いよね~。しばらく続きそうだから,いまの軽自動車売って,また燃費の悪い車に乗り換えようか”なんて消費者が変心してくれるとでも思っているのだろうか。中東でひとたび事変が起これば,省エネ化はさらに加速する。いい加減,幻想から目を覚ませと言いたい。

 我々が扱っている商品は,遠い中東の地の無辜の人々の血と涙が混じっている。石油を100㌫輸入に頼っているこの国で,ぞんざいな売り方をしてはいけないと思う。

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