セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.592『格安に潜む危険』

社会・国際

2016-01-19

 今月11日,愛知県津島市の“激安スーパー”として知られる「Aマートアブヤス」で買い物をしていた女性が,カレーチェーン「CoCo壱番屋」の店舗用冷凍ビーフカツが店頭に並んでいるのを見つけ,首を傾げた。彼女は「ココイチ」に務めるパート従業員だったので,本来一般小売されるはずのない食材が並んでいることに疑問を抱いたのだった─。 

 この商品は,壱番屋が異物混入の疑いがあるとして処分を委託した産廃業者が市場に横流しした代物だった。東海三県の34ヶ所の店舗で,約2万7千個が販売されたらしく,そのうちのかなりの数が消費者の胃袋に入ってしまったものと思われる。混じった可能性があるプラスチック片を口に入れてもただちに健康被害が出ることはないが,廃棄を頼んだ際に冷凍状態から一度溶けており,傷んでいる可能性もあるという。

 まったくもう…バレないとでも思っていたのかね。産廃業者は転売先に壱番屋の段ボール箱から詰め替えて卸すよう指示したそうだが,結局,スーパー店頭では“ココイチのカツ”が売り文句として使われていたという。何はともあれ,比較的早期に発覚したのが不幸中の幸いだった。買い物中に異変に気づいたパート社員さんには消費者庁あたりから“ファインプレー賞”のようなものを贈呈してはどうか。

 私が住む地域にある“激安スーパー”でも,このビーフカツが売られていたことをテレビで知った。平日でも大勢の客で賑わう店なのだが,こんな物を店頭に並べて「生活応援セール」なんてやられたのではたまったものではない。“安かろう,悪かろう”で済まされる話ではない。かつてはガソリンも粗悪品が一部のGSで売られるということがあった。また,脱税軽油の販売はいまも時々報じられている。価格競争の激化に耐え切れず,違法行為に手を染めて業界全体の信用を貶めるようなことは断じてあってはならない。

 価格競争のプレッシャーがもたらしたもっと悲惨な出来事は,今月15日に軽井沢の国道で起きたスキーバスの転落事故だ。乗員・乗客14人が死亡したほか27人の負傷者(18日現在)を出す大惨事となった。バス運行会社のずさんな管理体制が日を追うごとにボロボロと出てきているが,その根底には,格安バスツアーの熾烈な競争が関係していると指摘されている。報道によれば,件のバス会社は国が定めた最低料金26万円を大幅に下回る19万円で運行を請け負っていたとのことである。

 価格競争のしわ寄せは,会社の収益を悪化させるが,経営者はこれを防がんとして,従業員の健康や顧客の安全を犠牲にしようという“悪魔のささやき”に屈することがある。GS経営もコストとの戦いである。可能な限り安く仕入れ,無駄な経費を掛けないよう心を砕く日々である。セルフシステムはまさにそのために開発されたものである。安く(と言っても限度があるが),早く,なおかつ安全にガソリンを販売するための最適な方式を追求して行かねばならないが,従業員やお客様の安全を犠牲にすることは論外である。

 政権与党は,景気は確実に良くなってきていると喧伝しているが,庶民の生活は決して楽ではなく,生活防衛のために食費や光熱費を節約しながら,ささやかなレジャーを楽しんでいるのが実情である。しかし,それは危険と隣り合わせのものであるということを,この二つの事件は私たちに思い知らせるものとなった。

 こうした事件は,陸海空様々な業種で,恐らく今後も起こることだろう。そうであれば,消費者の側にも,格安食材や格安旅行など,市場価格を極端に下回るものに対しては“これ,大丈夫かな”という警戒感をを持ってもらうことが必要なのかもしれない。無論,「格安ガソリン」に対しても。そのようにして,極端に安くすると怖がられて買ってもらえないような世の中になれば,今回のような事件を幾らかでも食い止めることができるかもしれない。 

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