セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.594『ガソリン配達』

GS業界・セルフシステム

2016-02-02

 日本では新しく出来た小さな会社を総称してベンチャー企業と呼ぶ。ところが“ベンチャー企業”という単語は日本人が作った和製英語で,米国で”Venture enterprises”と言っても通じない。その類の企業のことは,米国では中小企業(Small and medium enterprises),または“スタートアップ”と呼ぶそうな。両者の違いは何かといえば,既存のビジネスモデルを応用して長期成長を目指す中小企業に対して,スタートアップは“いままでにないイノベーションを通じて人々の生活を変える事を目的とし,ごく短時間で急成長を遂げて一獲千金を狙う人々の一時的な集合体”と定義されている。米国では,IT関連でスタートアップと呼ばれる企業が多く誕生している。

 そんな米国で,最近注目を浴びているスタートアップのひとつに「WeFuel」という企業がある。直訳すれば“我々の燃料”という意味だが,一体どんな“いままでにないイノベーション”を始めたかといえば,1月26日からガソリンの配達サービスを開始したのだ。まだ,サンフランシスコの一部の区域をトラック2台で配達しているだけだが,同社のCEO,アル・ドンジス氏は「今年中にベイエリアをカバーし,2~3年後には全米を網羅したい」と野心的な目標を掲げている。同氏曰く,「テクノロジーはわたしたちの生活の様々な分野を変えてきたが,ガソリンは100年以上前と同じ方法で購入している」というわけで,今後順次各州の規制の壁を突破し,「すべての自動車がWeFuelとつながる未来を目指している」と,鼻息はすこぶる荒い。

 「WeFuel」の配達システムは,スマホのアプリを使ってユーザーの車の位置を知らせると,30分以内にガソリンを配達・給油してくれるというもので,ガソリン価格のほかにデリバリー代が7ドル49セント(890円)かかる。今後は,月額19ドル99セント(約2,400円)で無制限のプランを提供し,自動車にガソリンの残量が分かるデバイスを搭載させ,必要な場合にはユーザーがその場にいなくても給油できるサービスも検討しているとのことだ。果たして一攫千金となるか─。

 同様のビジネスが日本でも可能かどうか考えてみた。現行消防法では,ガソリンの小売りはGSなどの施設に限られているが,GS過疎地への対応策として,また,災害時の緊急対応策としてタンクローリーから直接販売する方式の実証試験を行なうと経産省が発表したのは昨年の2月。その後,目立った動きはない。まだ検討中? さすがお役所仕事,“スタートアップ”までに時間がかかることこのうえない。

 日本でも規制緩和が進んで,ガソリンの配達が認められるようになれば,配達料を含んだ新たな価格体系が構築されるだろう。利便性や安全性を謳えば,ガソリンに付加価値を持たせて販売できるかも。また,ガソリン配達のついでに,関連商品やサービスを提供することもなされるだろう。事実,「WeFuel」も今年後半から,アプリメニューにコンビニなどで売られているスナック類などを加えるとのことだ。さすがに抜け目がない。もし配達・給油作業を危険物取扱資格者に限るとすれば,大勢の有資格者を集めることができた企業が,いち早くネットワークを広げることになる。有資格者の争奪戦が起きるかも。

 自動車の構造も,駐車場や路上で給油することを想定したものに改造する必要がある。日本の窮屈な駐車場でもノズルを差し込めるよう,給油口の位置を工夫してほしい。また,車の持ち主がいなくても給油できるよう,キャップレス装置を標準装備にすることも必要だ。静電気防止のための装置や,ベーパー回収のための装置も付いていれば安心…え?そんな物をあれこれ取り付けるぐらいだったら,電気自動車をカイゼンするほうがいいですって? そうかもしれませんな。石油元売も,いまやガソリンより電気を売ることの方にご執心のようですし…。

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