セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.602『テロと石油』

社会・国際

2016-03-29

 某石油元売が系列GSに送った次のような通達文がある─。

 『2016年5月末に行なわれる伊勢志摩サミットに向けて,たくさんの各国関係者が来日されます。その中には,先日のベルギー同時多発テロ同様のテロ行為を企てている者も潜んでいる可能性があり,SSで販売されている危険物に関しても,テロの材料として悪用される可能性が十分あります。すでに消防関係からお知らせが届いている地区もありますが,いま一度日々の安全管理を徹底していただきたくお願い申し上げます』

 この通達文では,通常の危険物の安全管理に加えて,危険物の盗難や紛失が発生した場合には速やかに警察に通報することや,危険物の大量購入など不自然な購入者や不審者(車両)を発見した場合は速やかに警察へ連絡するようにとの指示がなされていた。

 わたしたちは,大袈裟でも何でもなく“テロルの時代”に生きていると言える。ブリュッセルの衝撃が収まらないうちに,今度はパキスタン第二の都市ラホールで爆弾テロが発生し(27日),少なくとも65人の死者,300人以上の負傷者が出ているとのことだ。人類は20世紀に二度の世界大戦を引き起こした反省から,世界平和を構築すべく英知を傾けてきたはずだったが,21世紀に入ると,世界はテロが日常茶飯事の状態になってしまった。サミットやオリンピックが開催される場所や期間だけ警戒していればいいのではない。わたしたちは,いつ,どこでテロの犠牲になるかわからない世界で生きているのだ。

 冒頭で紹介した通達文にあるとおり,危険物を貯蔵している我々GS事業者は,その管理に十分注意を払わねばならない。24時間営業でないGSでも,常時監視カメラの撮影・録画を行なうべきだろう。ミニローリーでの配達の際も,キーを付けたまま車を離れることのないよう運転手に指導を徹底させる必要がある。ガソリンには目を光らせていても,軽油や灯油にはそれほど注意を払っていないということはないだろうか。2011年7月にノルウェーで起きた連続テロ事件の際に用いられた爆弾は,アンホ爆弾という安価で簡単に製造できる代物で,その主材料は硝酸アンモニウムと軽油だ。身元のよく分からない人から,「軽油をドラム缶で売ってくれ」などと頼まれたら,少し警戒したほうがいいかもしれない…。

 最近のテロ事件の多くが,イスラム過激派によるものであることから,アラブ系の人たちへの嫌がらせや差別的な扱いが強まっているらしい。今月の26日,韓国ソウルで,粗末な身なりでリュックを背負ったアラブ系男性が,地下鉄駅付近の横断歩道を歩いているのを見かけたタクシー運転手が警察に通報,警官隊が出動する騒ぎとなったものの,事件性はないとして3時間後に収束したとのことだ。テロへの恐怖が,平等や博愛といった美徳をじわじわと蝕んでいる。私の店にもアラブ系の人が給油に来ることがあるが,別に何とも思わない。適切な仕方で給油しているのであれば,肌の色や身なりがどうであろうが,皆お客様である。

 中東に拠点を置くテロ組織の主要な資金源は石油である。ブルガリアの新聞「労働」が報じたところによると,「イスラム国」によって生産されたガソリンや軽油が,ブルガリアのガソリンスタンドで売られていたとのことで,当局が国内の50店舗以上のガソリンスタンドで検査を行なっているとのことである。これらの燃料を積んだタンカーは,ブルガリアの港に入る前に,トルコの7つの港に「不可解」な寄港を行なったことをロシアの探査衛星が確認しており,ロシアは,トルコ指導部が「イスラム国」から原油を購入しているとして非難している。よもや,日本の業転ガソリンにそのような疑いは掛けられることはないだろうが,世界を震撼させるテロの背後には,いつも石油がからんでいると思うとやりきれない。

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