セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.605『熊本地震』

社会・国際

2016-04-19

 店頭の計量機に次のような貼り紙をした。

 『お客様へ 災害時に備えて普段から自動車燃料は満タンになさるようお勧めします』─。多少“乗っかってる感”が無きにしも非ずだが,熊本県内のガソリンスタンドに長蛇の列が出来ている映像を見て,日頃から燃料,とりわけ,一般家庭では貯蔵が出来ないガソリンは,十分な量をタンクに蓄えておくことの必要性を改めて感じたので,告知させてもらった。

 NHKによれば,17日の時点で熊本・大分両県で約200店舗のGSが休止中とのことである。地震による直接的な被害に加え,停電で計量機が動かせなかったり,道路網の寸断でタンクローリーが来れないことなどが原因なのだが,余震を怖れて車中泊をなさっている被災者の方々にとっては死活問題である。一刻も早い復旧が待たれる。

 こういう状況に陥るたびに“東日本大震災の教訓が生かされていない”という声が挙がるのだが,実際のところ,あれほどの破壊的な災害が起きたらお手上げである。施設が損壊を免れたのであれば,売り切れ御免で営業するほかない。こうした災害時には,石油元売は系列店への供給に限るべきだという人たちがいる。何と言う狭量で,独りよがりな考えであろうか。被災した人たちのことよりも,災害を機に自分たちが優位な立場になることの方に関心が向いているとしか思えない。元売や業界団体は,系列・PB関係なく,一日も早く,一軒でも多くのGSが営業再開できるよう尽力すべきだ。

 希少品なのだからこの際値上げすべきじゃないかなどというさもしい根性の人間は,よもやGS業界にはいないと信じたい。元売や商社も,この機に便乗値上げをするようなことはありますまい。折りしも,17日にドーハで行なわれていた産油国会合は,増産凍結の合意形成に失敗し,持ち直しつつあった原油相場は18日時点で37㌦台に急落してしまった。とても価格を上げられる状況ではない。せっかくもうけるチャンスなのにと悔しがるぐらいなら,日頃から適正価格を維持しておけと言いたい。

 大規模災害時にも,日本人はGSや配給所で順番を守って忍耐強く並ぶことができると海外のメディアは賞賛している。しかし,東日本大震災の時もそうだったが,実際にはイライラして殺気立った目をした客の列に怯えながら誘導や給油をしているというGSクルーは少なくないだろう。被災者のみなさんは,長引く避難生活でストレスは極限にまで達していることと思うが,GSクルーに八つ当たりするのはどうか勘弁してもらいたい。

 一方,18日には,関西テレビの中継車が,熊本県内のGSの給油待ちの列に割り込んだとしてSNSで大炎上,関テレは事実を認めて謝罪するという事件が起きている。時に自制や忍耐を被災者のみなさんに促す役目を担っている報道機関がこの体たらくでは…。事件が起きたGSは恐らくセルフスタンドだと思うが,そんな横暴な客には給油許可を出さなければいいのに。いずれにせよ,中継クルーたちが,激昂した他の客によって車から引きずり出され,ボコボコにされなかったのは,やはり日本人の高い道徳心のおかげといえるだろう。

 熊本県ではいまだ断続的に地震が起きている。気象庁は,震度6以上の揺れが今後も起こるかもしれないと言っている。実際,最先端の科学技術を以ってしても,大まかな予知予測すら不可能なのであって,あすはわたしやあなたの地元で地震が生じるかもしれない。地震大国で暮らしている以上,日々怯えながら毎日を過ごすよりほかない。

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