セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.608『カエルの歌が聞こえてくるよ』

政治・経済

2016-05-17

 三菱自動車は日産自動車の傘下に入ることになった。今回のデータ改ざんは軽自動車の生産委託をしていた日産からの指摘で明らかになったとのことだが,実は日産側は以前からこの件について気付いていたものの,三菱が日産の傘下に入らざるを得ない状況が醸成されるのを待ってアクションを起こしたのではないかなどという憶測がなされている。真偽のほどは分からないが,事実だとすればしたたかな戦略といえる。ただし肝心の消費者は置き去りのままだが。

 “他に選択肢が無い”という状況になるまで追い込んだうえで,トドメに「自主性を尊重する」,「対等な立場に置く」,「経営陣はそのまま」といった“甘言”で籠絡するというのが“進駐”する側の常套手段で,昨年,矢継ぎ早にまとまった石油元売の統合も,大体そんな流れであったように思う。だが,「征服者」と「被征服者」の立場の違いは,記者会見での握手の感触がまだ残っているうちに明らかになってくるだろう。鴻海傘下に入ったシャープを見ても明らかである。「被征服者」となった社員や特約店の方々はいささか気の毒ではあるが,いまはそれぐらいのスピード感をもってリストラを進めなければならない時代なのだろう。

 それにしても,大型連休直前から全国各地で勃発した,元売販社や大手特約店による廉売合戦は凄かった。日進市でも,早ければ今秋にも経営統合する元売2社の系列販社の間で,熾烈な価格競争が繰り広げられ,先週末までずっと100~102円の看板が乱立していた。消費税を除けば92~94円。全量業転の当店では付いてゆけない水準だったので,追従せず,おかげで見事に売り負けた。ある商社の方に聞いたところ,やはり4~5円のマージン保証があったということだから,まともに戦っても勝てっこない。

 まるで赤いトノサマガエルと黄色いトノサマガエルが“俺たちの方が大きいぞ”“いや俺たちのほうがでかいぞ”と風船を膨らませているように見えた。「征服者」としての威光を見せ付けたかったのか,「被征服者」となってからナメられないよう実力を示しておきたかったのか,とにかく田植えのシーズンはまだだと言うのに「下げろ,ゲロゲロ」と喧しかった。相変わらず,量を売ることでしか評価されないという業界の実態を,元売自らが露呈した格好だ。

 三菱自動車がバッシングを受けているさなか,軽自動車業界のゴッドファーザー,スズキ自動車の鈴木修会長が興味深いことを記者会見で語っていた。

「大手さんの中古車市場が非常にさかんになっていた。こういうことでございますから,昨年の下期からですね,そういう事態に気がつきまして,私どももお行儀が悪い売り方をやめようじゃないか,ということで10月以降,ほとんどお行儀が悪い売り方をやめました」

 「シェアにはあまりこだわらないでやっていかないと,白モノ家電になっちゃう。もう既に秋葉原に軽が並んでいるという噂も出てきましたから。少しじゃなくて大幅に方向転換していきたいと思っている。自ら種をまいたきらいもありますから,自分でなりを直していく。私どもがなりを直しても,他のメーカーさんはどうだか知りませんが…」─5月11日付『東洋経済オンライン』

 自動車と違って,ガソリンは価格以外に差別化を図るのが難しいことは百も承知だが,やはり「お行儀の悪い売り方」は慎むべきではないか。我々“ならずもの”のPBスタンドのことはともかく,系列販社の売価よりもうんと高い価格で仕入れている,忠良なる特約店・販売店のことを元売はどう考えているのか。私には,系列販社や大手業者が「征服者」であり,あとは「被征服者」,いや,それ以下の扱いを受けているように見えるのだが…。

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