セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.61『二千円』

GS業界・セルフシステム

2005-05-30

 少し前のことだが、大学生風の二人組が来店し、プリカ券売機の前でこんな会話を始めた。

 「おい、千円のカードと三千円のカードしかないぞ、どうする?」

 「千円分じゃあちょっと少ないしなぁ…」

 「三千円分買うか…」

 「そうだ、千円カードを二枚買えばいいんじゃないか?」

 「あ、そうか!お前アッタマイイなぁ~」

 どうやら、二千円分給油しようとしていたようなのだが、“お前ら本当に大学生か?”とツッコミを入れたくなるような会話であった。それはともかく、私の店のような定額プリカ方式のスタンドに限らず、セルフスタンドの店頭では、大半の客が定額給油を行なっているようだ。フルスタンドで、店員に「レギュラー千円分お願いします」と頼んでいた頃、何となく貧乏くさい気分を味わっていた人は結構いたと思う。それが、セルフになり、機械相手となったことで、気兼ねなく定額給油ができるようになった。しかも、昨今のガソリン高騰で、ドライバーのみなさんはさらなる節約に走り、満タン給油の客は減る一方のようだ。

 スタンド業界人は、定額給油客を少々見下す傾向があることは前にも書いた。しかし、燃料タンクにガソリンを満タンに入れるのは、デッドウェートを増やし、燃費を悪くさせるだけだ。よほどの長距離を走るのでない限り、燃料タンクのガソリンは常に半分ぐらいに保っておくのが賢い給油法というものである。

 定額給油はスタンドにとってもありがたいことだ。満タン給油のために準備しなければならない大量の釣り銭用の紙幣や硬貨─これらは、両替料を銀行に支払って準備しなければならないものである。それも、みんなが50㍑ぐらい入れてくれる客ならまだしも、たかだか十数㍑の客のためにそれだけのコストをかけるのは馬鹿馬鹿しいことではないか。定額、つまり釣り銭を必要としない客は、いまやスタンド側にとっても歓迎すべき客と言える。

 ところで、定額給油の中で最も多い金額は幾らなのだろう。私が自分の店で観察する限りでは、「二千円」のようだ。ところが、私の店には二千円プリカが置いてない。それで、冒頭の客のように、千円プリカを二枚買っていただいていたのだが、今回、試験的に二つのレーンに現金読取機を取り付け、二千円までの客は現金を直接投入して給油できるようにした。循環式コインメックが付いているので、硬貨の釣り銭も出る。

 実は、私としては、たとえ小額給油に限定するとはいえ、アイランド上の屋外機器に現金の出し入れをさせるのは、防犯上心配な面もあり、あまり気が進まなかった。第一、千円紙幣で給油しようが、千円プリカで給油しようが、一緒ではないか─。

 ところが、スタッフのYに言わせると、それは“似て非なるもの”なのだそうだ。特に、初来店の客にとって、同じ千円の給油でも、プリカを購入して給油するというのは、心理的に抵抗を感じさせると言うのだ。二千円を超える給油となると、釣り銭のためのコストが大きくなるが、それ以下であれば、ほとんどが釣り銭を必要としないはずだから、現金方式にしたほうが良いというのがYの主張。

 こうして、気乗りのしない私は、Yに押し切られる形で改造を許可したわけだが(ウチは社長より従業員の方が利口なものですから…)、果たしてどうなることやら。今後、興味深い顧客動向が見られたなら、またこのコラムでご紹介いたします。

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