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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.610『ザ・デイ・アフター』

社会・国際

2016-05-31

 『71年前の晴れた朝,空から死が降ってきて世界が一変しました。せん光が広がり,火の海がこの町を破壊しました。そして,人類が自分自身を破壊する手段を手に入れたことを示したのです』─。

 5月27日,バラク・オバマ大統領は現職のアメリカ大統領として初めて被爆地・広島を訪問し,17分に渡る演説を行なった。その内容は,核兵器の廃絶と世界平和の実現を希求するもので,多くの人々の心を揺さぶった。演説後に聴衆席の最前列に座っていた二人の被爆者男性と握手と抱擁を交わしたことも感動を呼んだ。

 

 しかし同時に,とてつもない虚しさがこみ上げてもきた。2016年3月の時点で,諸国家が保有する核兵器は推定15,350発。いまも世界の至るところで,民族や宗教の対立,領土や資源の争奪が繰り広げられており,やむことはない。世界はいつ核兵器が使用されてもおかしくない緊迫した状況にあるとして,有名な「世界終末時計」は2015年に「3分前」まで進んだ。31年振りのことだそうだ。

 

 大統領がどれだけ素晴らしい演説をしても,現実には,世界情勢は良くなるどころかますます悪化している。世界の首脳がどれだけ会議を行なっても,恒久的な世界平和をもたらすことなど出来ない。“恐怖の論理”によって支配された世界では,核兵器を廃棄するよりも,核兵器を保有してるほうが安心なのだ。

 “また和田は,現在のGS業界の状況を,世界情勢になぞらえて皮肉るつもりでいるんだろう”と思われるかもしれないが,今回はそんな戯言ではなく,厳粛な気持ちを綴ろうと思う。今回のオバマ演説を聴いていて感じたことは,私たちは,いかに危うい世界の中で,束の間の平和を享受しているか,それがいかに恵まれていることか,ということだ。再びオバマ演説から引用する。

 『朝,子どもたちが見せる最初の笑顔。妻や夫といったパートナーがキッチンのテーブル越しに見せてくれる気遣い。そして,安心をくれる両親からの抱擁。私たちは,同じような大切な瞬間の数々が,ここ広島で71年前,多くあったことに思いをはせることができます』─。

 前日の店の売上をチェックしてガックリし,出社する途中の車窓から安売り看板を見てまたガックリし,相変わらず売れ行きの悪い店頭の様子にまたまたガックリし,この世の終わりが来たかのように意気消沈していても,広島や長崎,また,今日までの戦争において,突然,愛する人々を失った何百,何千万という人たちの苦痛や恐怖や絶望に比べれば,どうってことない。当たり前のことだ。しかし,私たちは,いまの平和が当たり前のものだと錯覚すると,本当に大切なものを見失う恐れがある。

 残念ながら,今回の広島でのオバマ演説は,2009年のプラハでの演説同様,ほとんど何の「チェンジ」ももたらさないだろう。そして,私たちは相変わらず,明日どんな恐ろしいことが起きても不思議ではない時代を生きてゆくことになる。

 

 オバマ大統領が原爆ドームを眺望した後,「キャディラック・ワン」に乗り込み,安倍首相に見送られて去ってゆく際,ねずみ一匹入れないはずの向かい側の広場に,一匹の黒猫が姿を現し,じっとその様子を眺めていたという。原爆が投下された日,人間とともにおびただしい数の動物や鳥類なども抹殺された。それらの“いきもの遺族代表”として“喪服をまとった”猫が参列しに来たのではとネットでは話題になっている。地球上のすべての生物を絶滅させる核兵器。そんな馬鹿げたものを使う前に,人類は伝染病か何かで滅びてほしいと他の生き物たちは思っていることだろう。

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