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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.613『離脱か残留か,それが問題だ』

社会・国際

2016-06-21

 英国で,欧州連合(EU)からの離脱か残留かを問う国民投票が今月23日に行なわれる。世界経済に大きな影響を及ぼす事柄だけに,皆が固唾を呑んでその行方を見守っている。もし,「離脱」ということになると,金融市場における英国の国力の低下は避けられず,多くの失業者(残留派の推計によれば95万人)を生み出し,欧州経済全体の景気悪化につながるとされている。当然,日本の輸出産業にも甚大な影響が出るとされている。

 そうしたリスクがありながらも,英国において「残留」と「離脱」が拮抗しているのはなぜか。その主な要因は,急増する移民・難民をこれ以上受け入れられないということのようだ。EU加盟国には難民受け入れを拒否できない,という法律があり,移民についても,特別な理由がない限り拒否できない。社会保障が手厚い英国は,難民・移民には特に人気のある国で,毎年平均18万人が流入しているが,離脱派は,税負担や失業リスクの増加,治安の悪化,英国文化喪失の危機などを理由に,難民・移民の受け入れを制限する必要があると主張している。

 “そんないけずなこと言わんと受け入れてやればいいじゃん”と言うのは,非当事者の無責任な意見であって,実際その国に住んでいる人たちにとっては,悩ましい選択なのだ。2014年,日本の年間難民申請者は初めて5千人を突破したが,そのうち法務省が認定したのはたったの11人。受け入れ率の低さは,先進国の中でもダントツだそうだ。とやかく言える立場じゃない。

 少子化と,震災復興や五輪整備などの影響で,日本はいま深刻な人手不足。その数は5百万とも6百万とも言われている。もはや外国人労働者に頼らなければやってゆけない状況だ。GS業界も例外ではない。しかし,外国人を単なる出稼ぎ労働者としか見ないようでは成功しないと専門家は指摘している。むしろ,外国人を雇う際,日本とは違った価値観や文化が新しいアイディアや発想を生み出し,ヒット商品や新しいサービスの開発につながることや,将来,海外に進出しようと思ったときに活躍できる人材を育成するといった戦略的な意図や目的を持つべきだと。

 いずれにせよ,日本のGS業界においても外国人スタッフが今後増加してゆくことは間違いない。彼らの頑張りがGS業界に活力をもたらすことになれば喜ばしいことではないか。だが一方で,言葉や文化の壁が存在するのも確かであり,やはりセルフシステムによるシンプルなオペレーションが基本となるだろう。

 EU離脱の話題から脱線したが,多くのGS経営者は,元売や組合から離脱すべきか,残留すべきか,日々模索している。“系列から離脱するなんて,一瞬たりとも考えたことはない”と仰る方もおられるかもしれないが,多くの系列特約店は,元売販社による“不当な廉売”に業を煮やしているのではないか。また,最近,元売販社がやらかしたインチキ整備のニュースを聞いて,SS研修会や技能コンテストにまじめに参加するのがあほらしくなった人もいるかもしれない。そんな方は,系列に留まることにどんなメリットがあり,離脱して独立系の道を歩むことにどんなリスクがあるのか,冷静に分析してみてはいかがだろうか。

 私は系列離脱を煽っているわけではない。独立系GS経営者も,「コストコ」などのカテゴリキラーの登場,元売二強時代の到来,エネルギー革命の行方など,これまでにない複雑で対処しにくい時代を迎えて,戸惑いや恐れを感じている。「脱ガソリン」と言うのは簡単だが,そのあとどこへ向かって,どうやって歩んでゆけばよいのか。「離脱」した者も,「残留」している者も,一寸先は闇なのだ。ところで,EU離脱についてポール・マッカートニーはこう語ったという。『レット・イット・ビー』(なるがままに)。

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