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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.614『離脱することにしましたが…』

社会・国際

2016-06-28

 人気小説のタイトル調に表現するなら,『英国,EUやめるってよ』っていう感じか。今月24日に行なわれた国民投票の結果,EU離脱が決定した。ただちに経済不安がマーケットを駆けめぐり,一日で世界の株式時価総額は約3.3兆㌦(330兆円強)が消失したという。この衝撃は果たして終息するのか。それとも,第二,第三の衝撃をもたらすのか。早くも,専門家諸氏がいろいろなことを“予言”しているが, 全然当てにならない。英国がEUを離脱することを見通せた人などほとんどいなかったではないか。

 いまの世界の指導者たちの困惑振りは,ビートルズの「ハロー,グッドバイ」の歌詞がよく言い表しているように思う。「君とぼくとじゃ言ってることが正反対 オー!ノー! 君はさよならと言い ぼくはハロー どうしてそうなんだい ばくは言う ハローハロー なのに君はさよならかい 困ったね~♪」─。

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 「離脱」に一票を投じた人の中にも困惑が広がっているとの報道もある。『テレビ番組で離脱へ投票したことを「後悔している」と告白する有権者が続出。一部には「英国脱出」を模索する動きも顕在化した。国民投票のやり直しを求める署名が増え続けるなか,一部議員は投票に法的拘束力がないことを理由に,離脱手続きに入らないよう求め始めた』(6月27日付「日本経済新聞」) もはや,民主主義にも限界が来ているように思える。

 今回の一連の出来事について,テレビで“EUの離脱は,町内会の行事や仕事が煩わしいので脱会するのに似ている。そうなると,ゴミを回収してもらえなくなったり,回覧板をまわしてもらえなくなったりするみたいに,村八分にされちゃうのかな”というツィートが紹介され,笑ってしまった。実際,EU諸国は英国の離脱交渉をできるだけ速やかに開始し,厳しい条件を突きつけて“見せしめ”にすることで,欧州各国にくすぶるEU離脱の動きを抑え込みたいのだという。

 GS業界のみなさんは,町内会に例えなくても,自分たちの業界で似たようなことがしばしば起きているので,離脱派の心情や,EU諸国の苛立ちが,何となく理解できるかもしれない。「安定」とか「共栄」といった理念をよりどころとして元売系列店として営んできたものの,最近急増している元売販社GSによって市場を荒らされ,“なんであいつらが安売りしているしわ寄せを,我々が高い仕入れ価格で負担しなきゃならないんだ”という不満が高まり,「離脱」を真剣に考えるようになった方は結構いるんじゃなかろうか。

 一方,離脱された元売は,ドミノ現象が起こらないようにと,ブランドの優位性や,系列内に「残留」することで享受できる恩恵を強調するだろう。しかし,元売への不信感は総じて強まっており,さらなる「統合」によって,新たな「難民」や「移民」が相当数生じるのではないかと予測される。

 しかし,離脱したらバラ色の未来が開けるかといえば,そんなに甘くはない。先日,独立系GS経営者が多く加盟する中央石油販売事業協同組合(COC)の研修会に顔を出し,みなさんの意見に耳を傾ける機会があったが,新たに進出してきた“第三国”の価格破壊テロとも言うべき攻勢に直面し,歴戦のつわものたちも不安を口にしていた。「和田さんはどう思う」と問われて絶句したが,“まあ,とにかくローコストに徹するしかないですね”と答えるのがやっとだった。

 しかし,教養や思慮があるとされてきた人たちの予想がはずれ,望んだ結果を得たはずの人々が戸惑うという世界を目の当たりにすると,予測不能のこの世の中で,先のことをあれこれ心配するのは時間の無駄であり,健康によくないだけだとも思う。いまできることをやる,できなかったことはあしたやる。その連続だ。シェークスピアはこう語っている。『簡潔こそが英知の真髄である』─。

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