セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.615『社風』

GS業界・セルフシステム

2016-07-05

 『出光興産と昭和シェル石油の合併に出光の創業家が反対している問題で,創業者の長男で元社長の出光昭介氏(88)が,「(昭和シェル石油とは)社風が合わない」と反対の意向を改めて示した。昭介氏は「(出光興産は)家族的な会社だが,昭和シェルは労働組合が強く全然違う」と指摘。合併に反対する意向は5月に内容証明郵便で会社側に示したという。創業家と経営陣の対立については「和やかに解決したかったが」としたうえで,両者が話し合いで折り合いをつけるのは「私の感じでは非常に難しい」と述べた』─6月30日付「毎日新聞」。

 “ふ~ん「社風」か…「シャフウ」ね~”という感想。そんなことははじめから分かっていたことなんだろうけれど,いよいよ結婚式が迫ってきて,やっぱり両人が幸せな家庭を築くのは難しいんじゃないかと本家のおじいちゃんあたりが言い出し,周りの親戚や友人たちの何人かも“やめといたほうがいいんじゃないの”なんて同調しだして,二人の運命やいかに─。

 この問題の根底にある本当の理由がどんなものなのかは,今後“石油業界の事情に詳しい”方々が,「やっぱりね」的な解説をしてくださるだろうから,拝聴・拝読させていただくことにして,今回は「社風」なるものについて考えてみたい。

 ブリタニカ百科事典によれば「社風」(corporate behavior style)とは「企業の中の人々に共有された行動の様式。それぞれの企業は意思決定の方法,伝達の方法,上下間の接触の仕方,共同の方法,説得の方法などに関して独特の特徴を持っている。社風は,企業の価値観,信念,規範としての目に見えない企業文化を知る重要な手掛かりである」と定義されている。人間であれば,たとえ人種や出自,嗜好や性格などが異なっていても,互いに対する敬意や思いやり,つまり,愛があれば幸福な結婚生活を築くこと可能だが,会社同士の結婚となると,そういう訳には行かないようだ。

 「牛とろばを一緒にしてすき返してはならない」という格言がある。体の大きさも重さも異なる荷役動物を同じくびき棒でつないで農耕作業を行なわせることの愚を戒める言葉だが,確かに不釣合いなくびきでつながれているなら,どちらも苦しむことになる。今回の統合は,一向に合理化が進まない石油業界に業を煮やした経済産業省が主導したと言われているが,もしそうであるなら,事前に二頭の巨獣の性格や体力を十分推し量ったうえで,くびきにつなごうとしたのかどうか。両社の経営陣も,ただ単に“大きいことはいいことだ”という感覚で計画を進めたということはあるまいか。

 ただし,縮小する国内市場において,合併や統合によって競争力を保持してゆかねばならないのも事実だ。“我が社の社風にそぐわない相手とは一緒にやれない”とか“一緒になるなら我が社の社風に従ってもらわねばならない”といったスタンスを取り続けることが果たしてこれからの時代に通用するかどうか。そもそも,人間が作り出したもので,永遠に続くようなものは一つも存在しないではないか。社風もまた然り。

 さて,我が社の社風は,○○の一つ覚えで「ローコスト」。自社だけでなく,お取引先のGS経営者様にも,ひたすらローコスト・セルフの効用を説いているが,これとて,いつまでも固執すべきものではないのかもしれない。ローコスト経営で生き残れた暁には,今度は日進市で唯一のフルサービススタンドに転換しようかな。

 ところで,今年の春の大型連休の時期,日進市では出光の100㌫販社とシェルの大手特約店とが,競い合うというよりは,協働するようなかたちで,原価割れの販売価格を掲出し,市況は壊滅状態に陥った。この無茶苦茶な価格戦術によって市場を寡占化することが,統合後の新会社の「社風」になるのかと思うと暗澹たる気分になった。そんなことをする会社ができるぐらいなら,破談になった方が良いと個人的には思う。

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