セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.617『アラクノフォビア』

GS業界・セルフシステム

2016-07-19

 『11日午後5時20分ごろ,大阪市淀川区加島のセルフ式ガソリンスタンドで,「車が燃えている」と従業員から110番があった。大阪府警淀川署によると,給油のため駐車しようとした兵庫県尼崎市の設計業の男性(49)が運転する乗用車が全焼し,約1時間後に消し止められた。男性と助手席にいた妻(49)は車内から脱出しており,けがはなかった。同署によると,乗用車の後部付近から出火したとみられる。沿道からガソリンスタンドに入った際,金属製の側溝のふたがはね上がり車底に接触した跡があるという。同署は,ふたで車が損傷し,ガソリンが漏れるなどして出火につながった可能性もあるとみている』─7月11日付「産経新聞」。

 消防車が17台も駆けつけるわ,ヘリコプターも飛んでくるわの大騒ぎになったらしいのだが,静電気でも,タバコの火でもなく,「側溝のふたがはね上がり車底に接触」しただなんて…ちょっと想像できない。念のため,私の店のふたをすべて点検してみたが,多少勢いをつけて走行しても,「ガタン」という音が出る程度で,はね上がって車底を突き破るなんてことは起きない。

 事故写真が何枚もネット上に投稿されているが,出火した車はトヨタ「プリウス」。鎮火後の写真を見ると,タイヤが燃えてしまったとはいえ,フェンダーにホイルが隠れるほど車高が下がっているので,ローダウン改造車(いわゆるシャコタン)だったのではないかとの指摘もある。仮にそうだとすれば,側溝のふたのわずかな突起部が車底部の燃料タンクあるいはパイプにぶつかって破れ,その際に発生した火花で引火・爆発したのかもしれない。いずれにせよ,真相は消防と警察の検分結果を待たねばならないが,入店してきた車がいきなり燃え上がった時の客やスタッフの恐怖は察するに余りある。

 それにしても,GS構内で車が火だるまになっているのに,向かい側の道路で野次馬が見物している光景をTVニュースで見たときには,ぞっとした。日本のGSが厳しい建設基準と予防規定によって高い安全性を保っているとはいえ,地下タンクに貯蔵されている何千㍑ものガソリンに引火して大爆発を起こすようなことが絶対にないという保証はない。東京電力福島第一原発の事故以来,この国で「絶対安全」といえるようなものは何一つないと思っている私は,このような場合,できるだけ遠くに逃げるのだが…。

 今回の事故は,たまたまセルフスタンドで起きたのであって,セルフゆえに起きた事故ではない。セルフGSで火災事故が起こるたびに,「セルフはコワイ」と喧伝する人たちがいるが,その多くはセルフだからではなく,給油客が無知あるいは非常識であるがゆえに起きるのだ。

 例えば,米国での事例だが,昨年9月,デトロイトのセルフGSで給油を終えた男性客は,給油口の近くにクモがいるのを発見した。普通なら払いのければ済む話だが,この男性,クモに対して異常な恐怖を抱く「アラクノフォビア」(蜘蛛恐怖症)だったため,パニックに陥り,なんと蜘蛛を追い払うためにライターを取り出して焼き殺そうという行動に出た。その結果,火はガソリンに引火し,スタンドの一部が燃える事態となってしまった。

 私の店も,周囲に山林が多いため,夏には様々な昆虫が“来店”する。このあいだも,日進市一帯で深夜に羽アリが大発生し,その夜は一度車から出た客が,あわてて車中に戻り,給油もせずに退散するという事態となった。翌日,羽アリの死骸が散乱したフィールドに水を撒こうと蛇口に手を伸ばしたスタッフが,どでかいカミキリムシのお出迎えを受け「マジびびった」そうな。計量機と柱の隙間に小さなクモが巣をかけるのは毎日のことで,取っ払っても取っ払っても,次の日にはまた巣を作っている。もし,「アラクノフォビア」の人が来店したら,馬鹿なことをやらかさないかと心配だ。ホントGSの店番は大変ですわ…。

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