セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.620『プリウスの小噺』

GS業界・セルフシステム

2016-08-09

 今月3日の夜9時30分ごろ,私の店に来店したトヨタ「プリウス」が,満タンにして給油を終えようとしたところ,客の足元からガソリンがじわ~と流れ出てきた。驚いた客の対応に出たスタッフは,JAF(日本自動車連盟)のレスキューを呼ぶよう勧めたところ,JAFから「ガソリン漏れということなので,移動時に出火する恐れがないか判断してもらうために消防署に立ち会ってもらいたい」とのことだった。

 ガソリンがどこから漏れ出したのかは分からなかったが,1~2㍑程度流出したら止まった。大したことがなくて安堵しているところへ,消防車2台と,ワゴン車1台,総勢12名(!)の消防隊が到着。全員,防火服に身を包み,給油レーンに停めたままになっているプリウスを取り囲んだものの,車体の下を代わる代わる覗き込んだり,吸着シートを敷いたりするぐらいしかやることもなし。少々大袈裟じゃないかと思ったが,「万が一にも出火する恐れがあるので」とのことだった。まあ,心強いといえば心強い。プリウスの客(中年女性)は唖然としていたが…。

 結局,JAFのキャリアカーが到着したのが午後11時。せっかく放水車まで出動したのだから,という訳ではないだろうが,最後にガソリンがこぼれたレーンを洗い流して消防隊も帰途に就いた。お疲れ様でした。

 消防隊員の話では,プリウスは燃料タンク系統の部品でリコールが出ているので,恐らく原因はそれではないかとのことだった。早速調べてみると,以下のとおり。

 『トヨタ自動車は(6月)29日,燃料タンクに取り付けられた部品にひびが入り,燃料が漏れる恐れがあるとして,乗用車「プリウス」「SAI」など7車種,計155万2,509台(2009年3月~15年2月生産)のリコールを国土交通省に届けた。同省によると,部品は樹脂製でタンク内のガスをろ過して排出するキャニスターの一部。設計ミスのためひびが入り,燃料が満タンだと漏れることがある。エンジンから離れており,発煙や出火の恐れはないという』─「産経新聞」 2016年6月29日付。

 翌日,トヨタの販売店から,「このたび □□様のプリウスの件でご迷惑をおかけしました」との電話があったので,やはり原因はリコール対象部分によるものだったのだろう。それにしても,いまどきの車,それも「プリウス」で燃料漏れなんて…。とっさに思い出したのが,このコラムでも取り上げた,7月11日に大阪市淀川区のGSに入ってきた「プリウス」がいきなり出火した事故。構内のマンホール蓋を跳ね上げ,それが燃料タンクを破損させたためとのことだが,その後の調査結果はまだ確認できていない。今回のリコールとの因果関係はなさそうだが,少し疑ってしまう。

 人気車種ゆえの宿命か,「プリウス」に関する悪口は結構多いようだが,ある自動車評論家のコメントは興味深かった。『自動車は本来,液体燃料と補修部品があれば70年前でも中央アジアの砂漠を踏破できた,自立的なシステムだった。無論,当時の自動車は燃費も効率も悪かったが,故障した場所でなんとか修理できた。いま,ハイブリッド車はたいへんな燃費や効率を誇っているが,自動車本来の自立性という点からするとずいぶん後退していて,個人では修理など及びもつかない高価・複雑な部品を必要とするおそろしく外部依存的な代物なのだ』─。

 確かに自立性という観点からすると,ハイブリッド車は退化しているのかもしれない。ハイブリッド車,そして電気自動車の社会を発展・維持させてゆくためには,今後も網の目のように張り巡らされたメンテナンス・サポート拠点が必要だろう。そのネットワークの中に,GSが占める場所はあるのか。どんどん複雑化しているシステムを整備・修理できるだけの機材や人材を確保しているGSがどれだけあるのか。当店では,今回のようなアクシデントが発生したら,消防署と連携して対処するのが精一杯。しかも,こちらには何の非がなくても,「事故報告書」は,GSが提出しなければならない。勘弁してくださいよ…。

コラム一覧へ戻る

ページトップへ