セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.623『ニッポンのセルフ』

GS業界・セルフシステム

2016-08-30

 少し前の話になるが,ある広告代理店から電話があり,おたくのGSで映像撮影をさせてほしいとの依頼があった。どんな映像ですかと問うと,最近,外国人観光客がレンタカーを使用する機会が増えているので,セルフスタンドでの給油方法について解説したムービーを作り,それを某レンタカー会社のホームページで観れるようにするのだという。海外の方が,よほどセルフGSが普及しているように思えるのだが,「日本のセルフ」におけるルールやマナーについて,外国人ドライバーに知っておいてもらいたい点が幾つかあるらしい。

 例えば,「火気厳禁」。そんなこと万国共通だろうと思うが,国によっては,くわえタバコで給油するようなゆる~い基準のところもあるようだ。また,日本では,給油ノズルの色が,レギュラーガソリンが赤,ハイオクが黄,軽油が緑であることを知っておいてもらうと,旅先で油種間違いをしでかすことも予防できる。何せ,日本人でも「軽自動車には軽油」と思い込んでいる人がいるらしいから。ちなみに,「軽油」とは「DEISEL」のことですよ。中国語では「柴油」。

 静電気予防シートに触ってから給油することも,多くの外国人ドライバーには知られていないそうだ。「日本ってガソリン入れるまでに面倒な手続きがあるんだなぁ」なんて思われるかもしれないが,逆に言えば,ガソリンはそれぐらい慎重に扱わないといけない代物なのですよということを学んでもらう良い機会でもある。

 次は精算方式だ。私の店のように,券売機でプリカを買ってもらう方式のところもあれば,「コストコ」のように,会員クレジットカードでしか給油できないスタンドもある。しかし,大半はクレジット,現金,プリカどれでもOKという外接機が設置してあるだろうから,親切なアテンダーに教えてもらえばよい。何せタッチパネルに漢字とカタカナとひらがなでいろいろな表示が出てくるから。

 “セルフなのに,スタッフがいるの?”と不思議に思う外国人ドライバーのあなた,それが「日本のセルフ」なんです!。“さすが「おもてなし」の国,親切だなぁ”と感心するのはかまわないが,「カーウォッシュはどう?」とか「オープン・ザ・ボンネット!」とか強引に勧めてくるスタッフもいるから,その時は母国と同じようにイエス・ノーではっきり返事をしてください。異国の地でエンジンが故障して停まっちゃったらどうしよう,なんて不安に思うのも無理ないが,日本のレンタカーはトラブルを起こすことは滅多に無いから安心して運転に集中してもらいたい。

 増えたとはいっても,日本国内でセルフが占める割合はスタンド総数の約3割。外国人ドライバーには,まだまだフルサービスのGSが多いこの国で,とまどうことが多々あるようだ。例えば,フルスタンドに入り,カタコトの日本語で油種と数量(金額)を注文したまでは良いが,スタッフがフロントガラスを拭き出したので,チップを払わされると思い,あわてて「ノー」と断ったという話を聞いた。外国では幾らかでもお代をいただいてしかるべきサービスが,日本ではまだまだ無料で行なわれているということ。そういえば,日本の飲食店で水がただで出てくることに感激したという外国人旅行客の話を聞いたこともある。

 東京オリンピックが近づくにつれ,外国人旅行客がレンタカーで来店する機会は確実に増えるだろう。いまから,「日本のセルフ」を安全・快適に使ってもらうための備えを官民が協力して進めてゆく必要があると思う。

 ところで,冒頭で私の店に撮影を打診してきた広告代理店の担当者の男性に,素朴な疑問をぶつけてみた。「何でまた,よりによってウチのGSをお選びになったんですか?」「はい,実は私,以前その近所に住んでおりまして,御社のスタンドをいつも使っていたものですから」─。外国人の方でも簡単に使えそうなシステムだと思ったものですから,みたいな返事を期待していたので少々がっかりした。

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