セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.625『優れた商品,優れたサービス』

GS業界・セルフシステム

2016-09-13

 今月8日,中国のポータルサイト『今日頭条』が,日本のセルフガソリンスタンドについて紹介する動画記事を掲載した。動画の記事では,軽自動車に乗った若い女性が,セルフのガソリンスタンドで給油する過程を紹介。タッチパネルで操作を行い,女性一人で簡単に給油している様子を見た中国のネットユーザーからさまざまなコメントが寄せられているという。その一部を紹介すると,「やっぱり日本はいいなあ。車も含めて環境がすべてきれいだ」,「日本は給油設備ですらこんなに進んでいるのか。シノペック(中国の大手元売)よりもずっと高級なガソリンスタンドじゃないか」,「日本の給油設備のレベルの高さを見ると,中国は20年たっても追いつけないと思う」─。(9月11日付 「Record China」)

 いやいや,いくら何でもほめすぎでしょと言いたくなるようなコメントが並んでいる。私は中国に行ったことがないからよく知らないが,中国のGSってそんなにひどい設備なのかいなと逆に驚いてしまう。確かにGSに限らず,セルフサービスを導入している店舗であれば,お客様が使用する機器類は,安全で,清潔で,使いやすいものでなければならない。日本のセルフGSがこの点で高いレベルにあることは間違いないようだ。だが,肝心の日本人がそのことをどれだけ有難がっているかといえば…。

 世界最高水準の給油システムだから少々高くてもいいなんて言ってくれる客は皆無である。“おもてなし”に力を入れるフルサービスのGSとて,となりのセルフとの価格差が5円も開こうものならそっぽを向かれてしまう。一方,『今日頭条』にはこんなコメントも寄せられている。「レギュラーガソリンが1㍑109円。でも日本人の平均収入は中国の3〜4倍はあるから,109円は全然高くない。しかもガソリンの質は高いし」─。

 「109円」がいつごろの価格かは不明だが,この1~2ヶ月の市況であれば安すぎる。品質の良いガソリンを,中国の消費者がうらやむような高機能設備で販売しているのに,109円ってどういうことだ,とコメントを投稿したくなる。これこそが日本のGS業界が慢性的な赤字構造となっている根本原因ではないだろうか。そのうち,外国のネットユーザーから,「日本のGS経営者達ってクレイジーじゃないの?!」なんて突っ込まれるかもしれない。いや,是非突っ込んでもらいたい。産油国でもないのに,水より安くガソリンを売っていることの愚かさを気付かせてやってほしい。

 『今日頭条』は,8月にも日本のGSの洗車サービスについて紹介する動画記事を掲載している。1台の高級車がGSで洗車してもらう様子を見た中国のネットユーザーからは,「人の車を自分の車であるかのように洗っている。これこそプロだ!」とか,「日本人の仕事態度は非常に細かく真面目だ。中国では毎回洗車してもらった後,もう一度自分で洗い直す必要がある」など,やはり賞賛の声が多く投稿されたという。中には,「客観的に言って,日本人が好戦的でなければ日本人には中国人を見下すだけの資格がある」などという“そこまで言わなくても”的なあぶないコメントもあったりする。たかがGS,されどGS。GSにおける商品やサービスに対する不満が,体制批判にまでつながるというのが,ネット社会の放縦なところである。

 日本のGSのサービスが,中国のみならず,諸外国から賞賛されることは業界にとって誇らしいことであろう。しかし,相変わらず「洗車半額券」などを乱発して,その優れた商品の価値を自ら貶め,優れた人材を失いつつあるのも事実である。近い将来,優秀なGSスタッフが,外国のGSにヘッドハンティングされるようなことが起こるだろう。いや,もうすでに起こっているかもしれない。わたしたちが提供している商品やサービスは,決して安売りするようなものではなく,適正な対価を得るに足るものだということを改めて思い知った次第である。

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