セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.627『女性ドライバーの日』

GS業界・セルフシステム

2016-09-27

 9月27日は「女性ドライバーの日」なのだそうだ。1917年(大正6年)のこの日,栃木県在住の渡辺ハマという23歳の女性が,日本人女性初の自動車運転免許証を取得したことに由来している。しかし,「女性ドライバーの日」だからといって,警察庁あたりが広報活動をするわけでも,自動車メーカーがイベントのようなことをするわけでもなく,単なる記念日みたいな扱いのようだ。まあ,いまどき,クルマを運転するのが男性だろうが女性だろうがどうでもいいっちゃどうでもいい。ダンプカーやタンクローリーだって若い女性が運転する時代だ。

 そんな中,面白い統計がある。男性ドライバーは,飲酒運転や乱暴運転による違反が多いのに対し,女性ドライバーの違反は,妨害運転や迷惑駐車などが多いのだそうだ。やっぱり,女性は総じて運転が下手なのかもしれない。ただし,セルフスタンドでの女性客の動向を観察していると,男性客よりも断然マナーが良い。給油ノズルや精算機の扱い方もやわらかだ。給油の仕方がわからなかったり,キャップが開けられなかったりしてスタッフを呼ぶ時も,概ねていねいな言葉遣いである。また,高齢者層においては,セルフ操作の呑み込みが男性に比べて早いように思う。恐らく日本においてセルフ給油を発展せしめたのは,うろたえる男どもを尻目に,合理的な感覚でさっさと給油してゆく女性ドライバーたちだったのではないか。

 九州の大手GSチェーン・新出光は,福岡市にスタッフ全員が女性のセルフスタンドを立ち上げた。コーヒーやパンを提供するカフェを開設したり,絵本を置いたキッズスペースや広いトイレも用意した。いわゆる“女性ならではの視点”で,サービスの差別化をはかり,女性ドライバーを取り込もうという狙いのようだが,女性スタッフが運営すれば,女性客の心を捉えられるとは限らない。それに「カフェ」や「キッズスペース」なんて使い古されたサービスが,いまさらどれほどの効果を挙げるのか疑問だ。さらに,それら諸設備にかかるコストが足かせとなり,女性ドライバーにとって最も重要な「安さ」を実現できないとなれば,逆効果となる恐れもある。

 世の中の女性たちは,その辺の男どもよりはるかに忙しい。とりわけ,子育て真っ最中のママさんドライバーたちは,1円でも安いところで手早く給油して,お金と時間を節約したいと思っている。これは以前からの私の持論だが,GSは行きたいと思って行くところではなく,仕方なく行く場所なのであって,そこに“憩い”や“癒し”を求める人はほとんどいないと思う。女性客の歓心を得たいのであれば,GSはでしゃばらない方が良いのではないか。例えば,カルチャーサロンやカフェレストランの片隅に計量機を1機だけ設置して,気軽に給油できるようにしておくとか,ヘアーサロンの駐車場内に洗車場を設けて,ヘアカットやネイルケアをしてもらっているあいだに愛車も“美容”してもらうとか。ただし,肝心の“本業”が繁盛しなければ元も子もないが─。

 一方,今年7月,に東京・歌舞伎町にオープンしたイタリアンレストラン「コンテラッツァ」は,男性のみの客は完全に断るという運営スタイルで話題になった。ネット上では,「これぞ“フェミニズム経営”」と賞賛する声もあったものの,大半は「逆差別」だと非難轟々,今月に入り“普通のレストラン”になったそうだ。GSでも,女性客に限って,価格を割引きしたり,景品プレゼントしたり,窓拭きをしてあげたりなどと優遇するのは,やはり「逆差別」と言われるかもしれない。

 ロシアのサマーラのGSでは,この夏,ビキニ姿とハイヒールで来店した客には,男女の区別なくガソリンを無料にするというプロモーションイベントが行なわれた。開始からわずか3時間で終了するほどの盛況だったが,列をなす女性ドライバーに混じり,恥を忍んでビキニ姿で給油する男性客も…。どこの国にもアホなことを考えつく経営者と,それに乗せられるアホな客がいるものだ。

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