セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.628『合併反対に反対』

GS業界・セルフシステム

2016-10-04

 『出光興産と昭和シェル石油の合併に出光創業家が反対している膠着状態が解ける糸口が見えてきた。出光販売店でつくる全国組織が(9月)26日に開いた理事会で合併推進を求めることを決定。創業家は思わぬところから揺さぶられた格好で,歩み寄る姿勢を見せないと販売店の離反を招きかねない。2017年4月の合併実現に向け,事態は緊迫してきた』─9月26日付「日本経済新聞」。

 いわゆる“社風”の違いを理由に,出光家がシェルとの合併に反対し,ご破算になるかもと噂されていた問題に,「全国出光会」が合併推進せよとの声をあげた。現時点では,出光家は反対の姿勢を崩していないようだが,「家族」である販売店からの要請に今後どのような返答をするのか,合併は実現するのか,その行方が注目されている。

 出光の系列給油所は全国に約3700ヶ所あり,その運営を約800の事業者が担っているのだそうだ。すべての事業者が合併に賛成というわけではないだろうが,理事会では,16人の理事らから現状を憂慮する声が次々と上がり,合併を滞りなく進めるべきだとの意見でまとまったという。理事会後,遠藤・出光会々長は記者団に対し,「需要減でガソリンスタンド業界は疲弊している。元売りのみなさんや創業家が考えているほど甘くない。(合併によって)供給過剰を是正しなければ販売現場も厳しいままだ」と,出光のみならず,GS業界全体の窮状について訴えた。

 GS経営者の親睦組織の動向が全国ニュースで取り上げられるなんてことは滅多にない。世間では,創業家と経営陣との“お家騒動”として面白可笑しく見ているかもしれないが,GS業界の住民にとっては,系列・PBの違いに関わらず,今後の業界の行方を左右する出来事であり,事の成り行きを固唾を呑んで見守っている状態だ。

 しかしながら“総論賛成,各論反対”となるのが,こうした話の常である。合併による「供給過剰が是正」される過程において,GS業界にも相応の痛みが生じる。PBスタンド向けの業転がなくなり,安売り店が死滅することで,系列GSが我が世の春を謳歌する,というような単純な図式とはなるまい。合併効果とはすなわちコスト削減効果のことであって,その中には,これまで2,3ヶ所の系列GSで販売していたガソリンを1ヶ所で賄ってもらうことも含まれている。多くの地域では,その役回りを元売販社が担うことになるのではないか。

 世界が平和になってほしいとだれもが願っている。しかし,そのために自分が仕事や財産を失ったりするとなればどうか。悲しいかな,人間は往々にして利己的であり,それがゆえに内戦や紛争が絶えない。皆が自分の権益を主張して譲らなければ,平和な世界は決して実現しない。石油業界の安定化を図る今回の合併話も,それを推し進めるとき,必ず不利益を被る人たちが出てくる。関係者すべてに利益がもたらされるということはありえない。それを理解したうえでの今回の「出光会」の“決起”は,その是非はともかくとして,勇気ある行動だと言えよう。

 それにしても,日進市では相変わらず出光販社とシェル大手,そこにEMとPBも加わって市況は“紛争状態”。長雨による客足の鈍さが各社の不安を増幅させているのだろうか,仕入れ価格は据え置き状態が続いているにもかかわらず,看板価格はカウントダウンが止まらない。合併を目前に控えての主導権争いなのか。それならそれで,価格ではなく,サービスで競い合えよと言いたい。それこそが真の“合併効果”だと思うのだが。

 とにかく,先に統合を発表した「JXTGホールディングス」にも言える事だが,出光とシェルが合併した暁には,両社の販売店の皆様には,いがみ合ったりせず,業界の平和と安定に向けて尽力してもらいたいと願う。出光会・遠藤会長は「創業家側は社風の違いを反対理由に挙げるが,同じ日本人として必ずわかり合える」と語っている─。

コラム一覧へ戻る

ページトップへ