セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.630『魅力的なデザイン』

GS業界・セルフシステム

2016-10-17

 『林業が基幹産業の日田市で,木造のガソリンスタンドの建設が進んでいる。2012年度に木質耐火構造として認められた工法を活用。危険物を取り扱うガソリンスタンドの木造は全国初とみられ,注目を集めそうだ。建設を進めているのは,日田石油販売 (瀬戸亨一郎社長)。12月上旬ごろ完成予定』─10月9日付「大分合同新聞」。

 日田石油販売(モービル系)の本業は製材所で,日田市内に展開する3店舗のGSのうちの1ヶ所を全面改築するに当たり,2階建て事務所(延べ128㎡)の構造材に日田材を利用するのだという。取材に対し瀬戸社長は,「木造は耐火基準を満たさない,というイメージを払拭したい。林業のまち日田だからこそ,住宅だけでなく会社事務所などにも木造化が広がっていけばうれしい」と語っている。

 木造建築と聞けば,木目のある建物をイメージするのだが,実際には木材を石膏ボードで覆う「メンブレン工法」という工法で建てられるので,ぱっと見では木造建築とはわからないらしい。肝心の建設コストについては,鉄骨より1割程度安くなるとのことだ。

 地震国における日本において,木造建築物の耐震性は注目に値する。コンクリートの比強度(重さに対する強度の比)を1とすると,圧縮の力に対しては,鉄は4.5倍,木材は9.5倍に,引張の力に対しては,それぞれ,51倍,225倍になる。世界最古の木造建築物,法隆寺の建造物群の持つエネルギー吸収効果や制振効果などは,世界の建築家たちから高く評価されている。

 もし,耐火性が確保され,コストも割安になるのであれば,日本のGSは今後,事務所棟だけでなく,キャノピーや防火塀も,木造建築にしたほうが良いのでは ? しかし,一方で木材は,腐ったり,蟻の害を受けやいため,経年変化が大きい材料でもある。また,乾燥収縮により反りやすく,節があったり,柾目と板目など方向によって強度が異なるため,取り扱いが難しい面もある。メンテナンスのコストが割高になるようでは,やはり敬遠されてしまうだろう。

 まあ,木で出来ていようが,鉄で出来ていようが,GSに求められるものは機能性。かつて6万軒を数えたGSも,いまではほぼ半分に減り,新たに造られるのは,面白くも可笑しくもない標準化された構造のGSばかり。そのせいか,かつてこのコラムで紹介した,「ガソリンスタンド・ノート」という,日本全国の個性的な構造のGSを紹介するウェブサイトも,2013年を最後に更新されなくなってしまった。【https://g-stand.com/album/archive.html】

 しかし,海外に目を向けると“これガソリンスタンド ?”と目を疑いたくなるような店舗がまだまだある。例えば,米国ロサンゼルスにあるGSは幾何学的なデザインのキャノピーが特徴的。ピカピカのメタリック素材で覆われているが,ソーラーパネルやリサイクル素材が使われているのだとか。同じく米国ビバリーヒルズのGSの流線型の三角形屋根もカッコイイ。元々ロサンゼルス空港で使うはずだったものが必要無くなったから,GSの屋根に転用したんだって。すごい発想だ。私のお気に入りは,デンマーク・コペンハーゲンのGS。シンプルだが素敵な雰囲気を持つGSだ。こんな店のオーナーになってみたいね…。

 ところで,私の店を含め,系列・PBいずれにおいても,もっともGSの美しさを損なうものは何かといえば,恐らく価格看板だろう。最近では,電光掲示板でピカピカ点滅するやつもあるが,実に下品だ。どれだけ意匠を凝らしたGSも,あれがデ~ンと置かれた瞬間,台無しになってしまう気がする。価格看板が無くても,そして,他店より割高でも,給油に行きたくなってしまうような魅力的なデザインのGSを造れればいいのだが,そんなGSを造る金があるなら“魅力的な価格”を掲出するほうが手っ取り早い,ということになる。(苦笑)

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