セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.633『認知症』

社会・国際

2016-11-07

 登校中の子どもの列に自動車が突っ込み,幼い命が失われる─。これまで何度見聞きしたことだろう。10月28日の朝,横浜市港南区で,87歳の男性が運転する軽トラックが引き起こした事故では,小学1年生の男児が死亡,7人が重軽傷を負った。容疑者は,27日朝にごみを捨てようと自宅を出発したあと横浜,川崎市内や都内を一日中走り回った挙句,翌朝に事故を起こしたとのことだ。事件当日の朝,自宅の前を何度も素通りしていたうえ,取り調べに対し,「自宅の場所が分からなくなり,道に迷っていた」と話していることから,容疑者は認知症の疑いがあり,軽トラックで“徘徊”していたのではないかと報じられている。また,容疑者が所持していた領収書などから,27日午後4時頃に横浜市金沢区内の,28日午前5時半ごろに川崎市川崎区内のセルフガソリンスタンドで給油していたことも明らかになっており,横浜区内のGSでは,従業員に給油を手伝ってもらったと供述しているそうだ。

 交通事故の総件数が9年連続で減少する中,65歳以上の高齢ドライバーが起こす事故はここ15年で倍増と,増え続けている。2015年に起きた交通死亡事故の1割超は75歳以上のドライバーによるものだったという統計もある。2009年の道交法改正で,75歳以上は3年に1度の免許更新時に認知機能検査が義務付けられたが,この時点では,検査で「認知症の恐れがある」とされても,そのまま更新されていた。そのため,2015年の改正では,該当者には医師の診断が義務付けられることになり,医師が認知症と診断すれば,免許の停止や取り消しになる。(施行は2017年3月から) しかし,「3年に1度では生ぬるい,毎年実施すべき」とか,「75歳で強制返納させるべき」などの強固な意見も噴出している。我が子の命を奪われた親のことを考えれば,そういう意見が必ずしも過激とは言い難い。

 実際,どこのGSも高齢ドライバーの来店率が年を追って上がっていることだろう。とりわけ,セルフスタンドにおいては,「給油の仕方を教えてほしい」とか,「給油口の開け方がわからない」などの理由で,スタッフが呼び出されることが増えているようだ。私の店にも,軽トラックに乗った高齢者が多数来店する。このあいだも,「いつもは孫がガソリンを入れてくれてたんだが…」と,背中の曲がったおじいさんに呼ばれ,プリカを買うところから,ゆっくり,ていねいにお教えした。

 「お年寄りにはスタッフが給油してあげればいいじゃないか」という声もあることは承知しているが,今後高齢ドライバーは激増してゆくわけだから,少々時間がかかってもセルフ給油を覚えていただかねば,対応がおぼつかなくなる。以前は,「スタッフ給油をご希望の方は1回○□円別途いただきます」という案内をしているセルフGSもあったと聞くが,年金生活者にそんなあこぎなことをするもんじゃありません。それに,何度も言っているように,私の店のセルフシステムは操作がとても簡単なので,高齢者の方でも安心してご利用いただける。また,高齢者にとっては,人にやってもらうのではなく,自分でやることが“頭の体操”にもなり,認知症の予防につながるかもしれない。

 高齢ドライバーが交通事故を起こしやすいおもな原因は,視野が狭まること,反応動作が鈍ること,永年の経験から過信に陥っていること,の三つなのだそうだ。この三条件は,いまの元売販社や安売りチェーン店にも当てはまるような気がする。少子高齢化によって,日本のクルマ人口はどんどん減少してゆくことは分かりきっているのに,彼らは目先の販売量ばかり追いかけて,業界の危機を予測して運転しようとしない。価格を下げても販売量は回復しない状況となっているのに,適正化に向けた反応は極めて鈍い。いままでの成功体験が忘れられず過信しているから,危険回避ができなくなっているのだ。そんな運転をするGSがいつまでも暴走しているものだから,GS業界の環境は一向に安全にならない。まだまだ犠牲者が出るだろう。

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