セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.635『ミスド』

政治・経済

2016-11-21

 『ドーナツチェーン「ミスタードーナツ」は7日,ドーナツ,パイ全43種類のうち35種類を10~30円(税抜き)値下げすると発表した。8日から実施する。値下げは8年ぶりで,来店客を増やし,販売増につなげる』─11月8日付「時事通信」。

 「ミスド」を運営するダスキンは,2017年3月期連結決算の業績予想を見直し,売上高を従来の1665億円から1630億円に下方修正した。とりわけ,事業の中核の担う「ミスド」の販売不振は深刻で,売上高は年々減少傾向にあったが,15年度の1020億円から16年度は915億円と100億円以上の大幅減収となった。

 「ミスド」不振の大きな要因は,コンビニ各社のドーナツ販売の影響と言われている。コーヒーの販売が当たったコンビニは,暖かい飲み物とセットで食べられるのに最適なドーナツに目を付け,「セブンイレブン」が2015年8月に全店でドーナツの取り扱いをスタート,「ファミリーマート」,「ローソン」も相次ぎ参入し,専門店の「ミスド」は守勢に立たされ,シェアを食われていったとのことだ。

 しかし,コンビニのドーナツも雲行きは良くないらしい。その証拠に,各社とも定番商品の見直しや,新商品の投入,パッケージデザインの刷新など,テコ入れを余儀なくされている。一方,高級路線・カフェ路線のドーナツも,厳しさを増している。鳴り物入りで日本に上陸した「クリスピークリームドーナツ」は,“コーヒー&ドーナツ”の食文化をアピールし160~230円のドーナツを提供,当初は連日の行列が話題になったが,日本進出10周年を前に苦境に立たされている。15~16年は24店舗を閉店し,100店舗を目指した直営店舗数は50を割り込んだ。

 結局“ミスド離れ”の最大の要因は,ドーナツ市場そのものが縮小しているからではないか。ドーナツ店の主たる客層は,ファミリーと女性だが,少子高齢化でファミリー層は減少しているし,健康志向ブームの中で高カロリーのドーナツは敬遠されつつあるとの見方もある。つまり,ドーナツというものが世の中のトレンドと逆行しているのではないか。人口減少と省エネ化によってどんどんパイが狭まっている我々の業界と酷似している。

 それでも,GS業界と違って,ドーナツ業界は,ひとたびヒット商品が生まれれば業績を挽回できるという“夢”があるだけまだマシだと思っていたが,そんな悠長なことは言っておれない状況となってきたのだろう,「ミスド」は最も手っ取り早い方法でシェア奪還の挙に出たというわけ。確かに,マクドナルドや吉野家のように,低下価格戦術によって,一時は「デフレの勝ち組」と称された企業もあるが,その結果“安物”のイメージが定着し,値上げ局面で大きく顧客を失うこととなった。最近では「ユニクロ」も値上げで失敗し,業績低迷を招いている。

 値下げは“劇薬”であり“麻薬”である。一時的な成功をもたらしたとしても,何度も繰り返すなら体がボロボロになり,将来的にはさらに厳しい経営状態に追い込まれるということを,これら名だたる企業の苦戦ぶりから学ぶべきなのだが,GS業界はまったく進歩なし。“ドーナツがなくても人間は生きていけるが,ガソリンがなくては生活できない”と高をくくっているのか,安売りの無限ループ状態が続いている。だが,最近では,ひょっとしたら,ドーナツを食べる人の数よりも,ガソリンを給油する人の数の方が少なくなるんじゃないかと思えてくるほど,自動車の電動化が進んでいる。

 ちなみに,ドーナツになぜ穴が開いているかといえば,第1に熱が通りやすくするため。第2に,全体が均等に膨らむため。GS業界も,そろそろ,勝者なき闘いを終わらせて,業界全体がまあるく,ふっくらしたドーナツのようになるべく,共生の道を模索すべきではないだろうか─。拙いコラムを書いているうちに脳が疲れてきた。糖分補給のため,「ミスド」へ行って,このたび30円も値下がりした「ポン・デ・リング」を食することにしよう。

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