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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.636『海賊とよばれて…』

エンタメ・スポーツ

2016-11-28

 映画に出てくる海賊といえば,古くはディズニー映画「ピーターパン」(1953年)のフック船長,いまならジョニー・デップ扮する「パイレーツ・オブ・カリビアン」(2003年)のジャック・スパロウだろう。日本映画に限るなら,一も二もなく,大人気アニメ「ONE PIECE」に登場する海賊たちだろう。そして,12月10日には,「海賊とよばれた男」という映画が全国一斉公開される。ただし,主人公は海賊ではなく,石油会社の社長である。

 原作・百田尚樹,監督・山崎 貴,主演・岡田准一という,ヒット作「永遠の0」のトリオが再び結集し“二匹目のドジョウ”を狙って放つ伝記ドラマである。『敗戦の悲嘆に暮れる日本にあって,誰よりも“日本人の誇り”を追求し,“海賊”とよばれ恐れられた国岡鐵造と,彼を支える仲間たち,そして最愛の妻との絆が織りなす重厚な人間ドラマが,この冬,今を生きるすべての日本人に,感動と勇気を与えます』─。(東宝WEB SITE より)

 主人公・国岡鐡造のモデルは,言わずと知れた出光興産創業者・出光佐造。出光の名を世界に轟かせた1953年の「日章丸事件」が劇中のクライマックスとなっている。連合国の統制下で自由に石油が輸入できなかった日本において,出光は自社タンカーを極秘裏にイランに送り込み,これを阻止せんとする英国艦隊の海上封鎖を大胆かつ巧みに突破して見事輸入に成功,日本中から喝采を浴びたという事件である。

 映画では,出光興産のDNAとも言える「大家族主義」のはじまりなども描かれているとのことだ。出光グループ社員ならびに特約・販売店のみなさんは鑑賞必須の作品と言えよう。そう言えば,むかし,「黒部の太陽」(1968年)という日本映画があった。世紀の難工事と言われた黒部ダム建設におけるトンネル工事の苦闘を描いた超大作で,石原裕次郎と三船敏郎が競演,当時八百万人もの観客を動員した。この映画,いまでも建設会社・熊谷組の社員研修で上映されていると聞いたことがある。巨匠・熊井 啓監督らしからぬ冗長なドラマが延々と繰り広げられ,上映時間は3時間16分。忍耐力を養われることだけは間違いない。果たして,このたびの「海賊とよばれた男」はどうか。見終わったあと,「出光一家」の一員であることをまわりに言いふらしたくなるような作品になっていれば良いが…。上映時間は2時間25分。

 しかし,いまの出光の関係者にとっては,現在の創業家の意向のほうが気がかりで,佐造翁の武勇伝に思いをはせる余裕などないかもしれない。大株主である出光家の反対に遭って,昭和シェル石油との合併が事実上,無期限延期に追い込まれてしまったこのタイミングでの映画公開は,良いとも言えるし,悪いとも言える。映画が“日本人の誇り”を声高に訴え,メジャー何するものぞという調子なら,外資系元売との合併なんてとんでもない,というムードになってしまうかも。一方,日本の繁栄のために世界万国と手を携えてゆこうというメッセージが強調されるなら,民族系という殻を破って「海賊」も「貝族」も一つの“家族”になろうという機運が高まるかも。どちらにせよ,映画がヒットしなければ詮無いことなのだが…。

 それにしても,「出光」という会社がこれほど注目された年は,あの「日章丸事件」以来ではないだろうか。シェルとの合併が成就するにせよ,しないにせよ,苦難を乗り越えたその先には,新しい出光(注:新出光のことではない)が生まれるのではないか。とりあえず“がんばれ,出光”と無責任なエールを送っておこう。

 ところでこの映画,観に行くかと問われれば,昨今の日本映画のつまらなさに辟易している私としては,わざわざ劇場まで足を運ぼうとは思わない。正直この作品も,予告編を見て“日本人の誇り?なんだかなぁ~”と思ってしまった。それに,今年は「シン・ゴジラ」を観た衝撃で,ほかの映画を劇場で観ようという気になれない。「君の名は。」も観ておりません。

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