セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.64『最高の人材とは?』

GS業界・セルフシステム

2005-06-20

 先日、名古屋市内でカークリーニングを営んでいる友人と雑談した。実は、かねてからその友人に、私のスタンドの空いているスペース(以前洗車機があった)に出店しないかと持ちかけていた。売上の何パーセントかを水道代と場所代として払ってもらうだけで、あとは自由にやってもらって結構という「テナント条件」に、友人はすっかり乗り気だったのだが、計画は無期延期となってしまった。理由は、人手不足である。

 ていねいな仕事ぶりが評判で注文は切れ目なく舞い込み、トヨタ系中古車センターなどからも仕事の依頼があるものの、人手不足でこなせないと嘆いていた。人手といっても、ただ人足を集めれば良いという訳ではない。彼曰く、カークリーニングというのは職人の世界なのだそうだ。道具とマニュアルさえあれば、だれでも“熟練工”になれるというわけではない。時間をかけて訓練を施せばそこそこの技量を身に付けることができるが、やはり、センスがなければ客に満足してもらえる仕事はできない。例えば、車内清掃をする際、丸い所はまあるく、四角い所はしかくく、スナップを利かせて“キュキュッ”と拭きあげる─そういう所に、カークリーニング職人としてのセンスが現われるのであって、これは繰り返し教えてもセンスのない人間にはなかなか習得できないことなのだと言う。

 「へぇ~、そんなものかねぇ…でも、そういうセンスのある子はなかなか見つからないんじゃない?」

 「そうなんだよ。ちょっと見込みがあると思って仕込もうとすると辞められちゃったりして…センスがあっても情熱がないんだよな…ホント嫌になっちゃうよ」

 で、結局その会話は、「自分が三人ぐらいいればいいのになぁ~」というぼやきで終わった。しかし、彼のような悩みを抱えている人は、ガソリンスタンド業界にもいっぱいいると思う。従業員一人一人が、経営者と同じ感性と情熱を持って仕事に取り組んでくれればこんなに素晴らしいことはない。しかし、それは幻想である。業界コンサルタントのセンセイ方は、「こうすればヤレル!こうやればデキル!」とおっしゃるのだけれど、結局その中身はと言えば、従業員満足度を高めろだの、ホメ倒してやる気を引き出せだのといった抽象論、精神論が何と多いことか。あるセンセイなど、「私がこの業界でコンサルティングを始めてもう三十年近くになるが、その間この業界はちっとも進歩しておらん!」と聴衆に渇を入れたそうだが、それは図らずも自分の無能振りを喧伝していることにならないか!?まぁ、毎度同じ話を金まで払って有り難がって聴いている経営者も経営者だけれどね…。

 いずれにせよ、人を集め、教え、育てるというのは、やたら金と時間と労力がかかるうえ、それらを費やしても成就する確率は低いという、割の合わない仕事なのだ。自腹を切って焼肉を食わせ、酒を飲ませて「明日からカンバロウ!」と檄を飛ばした翌朝に、その部下からの電話で「スミマセン、二日酔いできょうは休ませてください」─こんな経験をした経営者や管理職の方、いませんか?

 結局、ガソリンスタンドでカーケア収益を上げるための最も手っ取り早く、確かな方策は、その会社に最も愛着と情熱を抱いている人物─経営者自身が、休むことなく店頭で働き続けることだ。とはいっても、経営者も生身の人間、そんなことは不可能だというのであれば、是非セルフ化をお勧めしたい。あらかじめ、洗車や整備をする曜日を限定しておけば、あとは店を任せてゆっくり鋭気を養うことができる。何も、365日、朝から晩まで稼ごうとしなくても、無理せず、効率よく働けば良いではないか。要は費用対効果の問題なのだ。わらわらと五人も六人も従業員が出て来る巨艦セルフ店と違って、社長一人でできる分量と利益の仕事をこなせば良いのだ。例えば、カークリーニングは午前・午後一台ずつで、完全予約性、日曜日は休みなんてやり方でも良い。セルフ化によって、その店の最高の戦力である経営者に存分に活躍してもらってはいかがだろうか。

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