セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.65『セルフ的声掛け術』

GS業界・セルフシステム

2005-06-27

 このコラムを書いている時点では、まだ7月の仕入れ価格の通知が届いていないのだが、全油種において大幅に値上がりすることは確実な状勢である。何せ、昨年の今ごろはまだ1バレル30㌦台だった原油が60㌦を越えてしまうという有様なのだから、これから先どこまで上がるのやら…。しかし、日本経済はと言えば、1970年代のオイル・ショックのような騒ぎが起こるわけでもなく、いたって平静さを保っている。

 とはいえ、やはりこの数ヶ月間のガソリン価格の高止まりは、ドライバーの買い控えを促したことは事実だ。全国的にゴールデンウィーク中の販売は振るわなかったようだし、それ以後はもっとひどい状態なのだという。我が「セルフスタンド日進東」も例外ではない。もともと小額給油の客が多い店ではあるが、最近は千円分だけ給油する客が特に目に付くように感じたので、このままだと、客にちまちまと給油するクセが付いてしまうと思い、一計を案じた。プリカ券売機に『原油価格の高騰により、来月上旬にはガソリン等の値上げが予想されます。今月中の満タン給油をお勧めします』と貼り出してみたのだ。

 果たして、販売室に入ってきた客は、慣れた動作でさっさとプリカを買ったあと、一瞬足を止め、券売機に貼られたメッセージに目を留めている。もちろん、それを見て即座にもう一枚プリカを買うほど、人間の購買行動というのは単純なものではない。しかし、プリカを買ってゆく客のほとんどが「チラッ」とにせよ、「ジィ~」とにせよ、このメッセージに注意を向けていることは明らかだった。そうして迎えた最初の週末は、この3ヶ月間で最も売上げの多い一日となった。たまたまその日が給料日直後だったことや、真夏日のような天候だったことなどの諸要素が重なっただけなのかもしれないが、“メッセージ効果”も少なからずあったのではないかと手前勝手に推測している。

 今日、セルフ化によって、ガソリンスタンドでの従業員と客との対話が極端に少なくなっているのは事実である。しかし、それは特段悪いことではない。従業員が、親しげに“毎日暑いですね~”と声を掛けてきたかと思ったら、すかさず“エンジンの調子を見ておきましょうか”などと迫られ、あれこれ売りつけられた経験を持つドライバーたちは、この種の“対話”に嫌悪感すら抱いていると言ってよい。また、従業員が「来月からガソリンが値上がりしますので、きょうは満タンにしておきませんか?」と勧めても、その言葉にすんなり応じる素直な客はそういるものではない。彼らの懐具合もさることながら、客としてのプライドというものが、そうした勧めを拒ませるのだ。

 商売っ気から出たにせよ、親切心から出たにせよ、客はその場で従業員に、ああしなさい、こうしなさいと言われて従うのに、少なからず抵抗を感じるのではないだろうか。むしろ、伝えたい情報を目に見える場所に表示しておき、あとは客自身の判断に委ねるほうが良いのではないだろうか。

 洗車や車検の告知にしても、適切な場所に簡潔で率直なメッセージを掲示したほうが、凡百の声掛けよりもよほど効果的である。ただし、あまりゴチャゴチャと掲示してあると逆効果。よく複雑なメニューシステム表が防火塀に所狭しと貼ってあるスタンドがあるが、あれ、ほとんどの客にとっては見る気にもならないだろう。トイレに「あなたの愛車をピカピカに」なんて告知チラシが貼ってあるのも、ほとんど効果がないと思う。人がオシッコしているときに何かを勧められたってウザイだけだ。

 私が考えるに、アイランド上の、客が給油しているとき最も目に付く場所に、「洗車をなさりたい方は押してください」という表示とともに、呼び鈴を取り付けておく。その他余分な説明は一切なし。呼び鈴を押せば、待機していた“精鋭スタッフ”がメニュー表片手に飛び出してきて説明するというシステムはどうだろうか。客は、自分の判断で洗車をしたいと思って呼び鈴を押したわけだから、直接“商談”に入れるわけだ。

 セルフスタンドでは、客が店員からの勧誘や説得を受けることなく、客自身の判断で物事を決定できるような環境が整っていなければならない。セルフスタンドとは単に給油を客自身が行なうだけではなく、何を、いつ、いくら買うかという判断も「セルフ化」されているべきなのだ。

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