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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.650『独自路線で生き残れ』

政治・経済

2017-03-20

 このコラムでも時々取り上げているLCC(格安航空会社)。2011年,全日空などが出資し,日本発のLCCとして立ち上げたのが,関空を拠点とする「ピーチ・アビエーション」。就航は2012年3月1日。まだ閑古鳥が鳴いていた関空から,札幌行きのピーチ便が,定刻より17分遅れで乗客162人を乗せて飛び立った。当時,関西と札幌・福岡の2路線,旅客機は3機で始まったピーチは,現在,国内線14,国際線13の計27路線を18機の旅客機で運航しており,業績も2014年3月期に国内LCCで初めて黒字転換し,16年3月期は営業利益が2倍になるなど好調だ。また,関空を発着する定期便の便数は,国内・国際ともにピーチが最多。関空全体の利用者数も,2011年度は1385万人だったのが,2015年度には2405万人と1.7倍以上増加しており,関空にとってはまさに“ピーチさまさま”という状況である。

 そのピーチ,就航5周年を前に,大株主のANAホールディングスが出資比率を現在の約39%から67%に引き上げ,連結子会社とすることが決定された。ANAはピーチの独自性を維持していくと明言しており,ピーチの井上CEOも,マイレージ導入や予約システムの統合,ANA便との共同運航については「一切やらない」と断言している。さらに,井上氏は,雑誌『東洋経済』のインタヴューで,ピーチ快進撃の秘訣を問われ,「何をやるかではなく,何をやらないかを明確に決めたことだ。妥協して儲かるならいいが,とんがってきた生き様の角が取れてしまい,普通に近づいてしまう。だからアライアンスは論外」と歯切れ良く答えている。しかし,これからもとんがっていられるかどうかは,やはり業績如何であろう。独自性をなお一層発揮して,年々激化するLCC業界で“勝ち組”となれるかどうか─。

 近年,GS業界においても,元売子会社が“独自性”を発揮している。親会社の唱える「採算性の重視」という方針を無視して,地域最安値の価格看板を出している子会社GSは少なくない。同じマークを掲げている一般特約・販売店との共存共栄を図ることなく,量販路線をがむしゃらに突き進んでいるように思える。しかし,その結果は,LCC業界のように市場のパイを拡大させることにはならず,むしろ,カニバリゼーション(共食い)を引き起こし,疲弊の度合いを深めることになった。結局,そのダメージが親会社の体力をも蝕んでいる。来月から発足するJXTGの傘下には,1,400ヶ所余りの直営店があるが,相変わらず“共食い”を続けるのだろうか。

 しかし,元売子会社だけに非があるわけではない。独立系GSも,系列店何するものぞとばかりに戦いを繰り広げ,少なからずダメージを負った。何人もの安売り量販店々主が“以前はしばらく安売りすれば相手(系列)も音をあげて,数量も取り戻せたのに,最近は全然諦めてくれない”とこぼすのを聞いた。そこへ参戦してきたのが,「コストコ」などのカテゴリキラー(CK)。例えて言えば“うちが経営するホテルに泊ってくれるなら,宿泊代や食事代や土産代で十分稼がせてもらえるから,飛行機代は儲けがゼロでいい”という航空会社が現れたようなものだ。そのうちLCC業界にも,そういう「送迎ヒコーキ」を飛ばす会社が現れるかもしれない。

 価格の優位性が保てなくなった独立系GSが,この厳しい環境の中でどうやって生き残ってゆけばよいのか。ピーチの井上COCの「何をやるかではなく,何をやらないかを明確に決めた」という言葉は,まさにローコストセルフの哲学でもあるが,それだけでは不十分だと思う。元売やCKと伍してゆくためには,独立系GSならではの,自由で挑戦的なサービスが必要だ。ピーチでは,「大喜利」と呼ばれる社内公募制度があって,優秀な案には「座布団」が与えられ,承認されれば予算が付くという。「ピーチの価値観に反するもの,つまりチャレンジングでないもの,おもろくないもの,くそまじめすぎるのは全部ダメ。こういうプロセスが企業文化をはぐくむ」と,井上氏は語っている。全国の独立系GS経営者も,ネット掲示板などで「大喜利」を開催してみてはどうだろうか。もしかすると,ももいも…じゃない,思いもよらない,ももしろい…じゃなかった,面白いアイディアが出てくるかもしれない。

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