セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.670『ティッシュボックス プレゼント』

GS業界・セルフシステム

2017-08-14

 愛知県T市に,新たに大型セルフスタンドがオープンした。オープンキャンペーンは毎度おなじみの“ティッシュボックス5箱プレゼント”。景表法の関係なのか,20㍑以上給油に限ると断ってあったものの,いまどき20㍑以上入る車なんてそうないので,実際には,数量問わず気前よく景品を渡していたそうだ。知人がキャンペーン期間中の3日間通って計15箱もらったうえに,最終日に会員カードを作ると20箱もらえると勧められ入会金無料でゲット。35箱ものティッシュをタダでもらえるなんてと“感動”していた。

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 この地域には,安売りPBセルフが2店舗を展開していたためたちまち市況が陥没。いまや愛知県屈指の安売り地帯と化している。せっかく景品まで付けるのだから,そんなに安く売らなくてもと思うのだが,そこは依然として数量至上主義が幅を利かせる我が業界,スタートダッシュが肝心とばかりに116円(税込)できょう現在まで推移している。割引クーポンなどを使うと112円らしい。迎え撃つかたちとなったPBセルフも114円。この状況は当分続くとみられる。T市民は大喜びだが,地元GSは大変だ。

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 それにしても,なぜ景品にティッシュかといえば,生活必需品であることに加え,来店客のほとんどが自動車で来店するので,かさばっても迷惑がられないからだそうだ。醤油や洗剤のように,銘柄によってインパクトがぶれることも少ないらしい。ただし,ただのティッシュではなく「クリネックス」だとか「スコッティ」などの銘柄を宣伝チラシで謳うと効果は倍増するとか。“いろいろ試してみたけれどやっぱりティッシュがイチバン”とのことで,オープンしたあとも「毎週土・日はティッシュプレゼント」と銘打ってがんばっているGSは結構ある。

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 お客からすれば,こんなに気前よく景品をくれるなんて,ガソリンってよっぽど儲かるんだなと思えるに違いない。枚数や品質にもよるが,ティッシュボック5箱は,スーパーやドラッグストアで目玉商品として190~230円ぐらいで売られている。これより多少安く仕入れることができても20㍑換算で10円近い負担となる。マージンが20円もあれば,どうってことないのだが,現状ではポケットティッシュ1個ぐらいで勘弁してくださいと言いたいぐらいだ。

 元売は,時にこのティッシュ代を販促支援費として負担することで,系列店の増販を促してきた。仮にキャンペーン中,5箱セットのティッシュを1500セット配ったとして,1セット150円で22万5千円。225㌔㍑分の販売量に対して1円のインセンティブを支給したかたちになる。また,そのうちの25㌔㍑が増販分だとして,それに対するインセンティブだと解釈するなら,1㍑あたり9円も補填したことになる。あくまで仮定の話だが。

 現実には,そんなにうまくゆくことは稀だろう。最近は,キャンペーンをやっても減販を食い止められれば御の字だという声も聞く。お客は景品もくれて,ガソリンも安くしてほしいと望んでいる。その期待に応え続けるだけの体力があるかどうか。繰り返しになるが,景品を付けて売る時には,それが利益として還元される仕組みでなされなければ,GSは骨折り損を被るだけで,喜ぶのは石油元売と製紙会社だ。お客からは,相変わらず,「GSって儲かってるんだな~」と誤解されたままだ。

 ところで,ティッシュペーパーの原材料はパルプと呼ばれる,木をほぐして出る繊維を集めたものだ。パルプは木材チップを大きな蒸解釜で煮込んでうえ,二酸化塩素や酵素などを使って抽出される。日本製のティッシュは,品質の問題などから100㌫木材パルプを使って作られており,草や藁,古紙などのパルプは混ざっていない。直径14㌢,高さ8㍍mの木一本から作られるティシュペーパーは約200個だそうだ。無論,製造の過程で大量の石油が消費されている。そのようにして作られたティッシュペーパーを,わずかなガソリンを売るために何百個もタダで配る。みなさん,どう思いますか?

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