セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.706『値上げする勇気』

政治・経済

2018-05-07

 『ヤマト運輸を中核とするヤマトホールディングスが5月1日に発表した2017年度決算は,営業利益が356億円と前期比約11%減の減益予想から一転,約2.3%の増益で着地する結果となった。宅配便の単価上昇が功を奏し,2017年度は昨春以降,人件費などコストの上昇分を運賃に反映させるべく,法人顧客1100社との交渉を展開。約6割とは値上げで妥結した。ヤマトの取扱い荷物の1~2割を占めるとされるアマゾン向け運賃は今年1月に平均で約4割上昇。また,個人向けの基本運賃も2017年10月に平均で約15%引き上げた。2018年度業績の会社計画は,売上高が1兆6000億円(前期比4%増),営業利益は580億円(前期比62.5%増)とV字回復を見込む』─5月2日付「東洋経済ONLINE」。

 取扱量が年々増えてゆく中で,あえてボリュームを減らしたうえで単価を値上げする─。販売量が減少してゆく中でも,価格引下げによる分捕り争いを続けているいまのGS業界には到底できない発想転換だ。GW中も,全国各所で130円台どころか120円台でお売りになっておられる方々が「gogo.gs」の価格ランキング上位にズラリとお並びになっていた。オリコンのヒットチャートじゃあるまいし,何をそんなにムキになって“上位争い”に興じているのか。仕入価格は上昇傾向にあるというのに─。

 仮に135円のガソリンをヤマト運輸に倣って15㌫引き上げると155円。現時点の仕入価格なら20円以上のマージンが得られる。もうけ過ぎだろうか。ガソリンを1円でも安く売ることでお客様に喜んでいただくのが“使命”だと唱える方々もいらっしゃる。もっともらしく聞こえるが,価格競争の果てにGSが次々と姿を消しているいまの状況が続けば,迷惑を被るのはお客様だ。運送業界は“我々がいなくなったら困るでしょ?そうならないために応分の負担をお願いします”と,至極当たり前の理屈で値上げに成功した。しかも,お客様をコントロールするまでに至っている。

 『引っ越し業界最大手,サカイ引越センターの2018年3月期の売上高と営業利益が,いずれも過去最高になった。同社が1日発表した決算によると,売上高が前年比10.5㌫増の883億円,営業利益が同38.1㌫増の104億円だった。1件あたりの引っ越し単価は10万8591円。リーマン・ショック以降では最高となった。企業の業績改善で長距離の転勤などが増えたこともあるが,値引き合戦が緩和したのも一因だ。19年3月期は,売上高が7㌫増の945億円,営業利益は4.1㌫増の108億円を見込む。引っ越しが年度末に集中するのを避けるため、異動時期をずらす企業が増えていることなどから,従来閑散期とされた5~6月の仕事も増えているという』─5月1日付「朝日新聞」。

 “やればできる,やったらできた”のお手本のような話ではないか。勇気を持って単価是正に取り組んだ結果,お客様の理解と協力を引き出すまでに至ったのである。GS業界も“我々が無くなったら困るでしょ?”と堂々と価格是正に取り組んでもいいんじゃないだろうか。まあ,石商がすっかり弱体化したいまの業界では,音頭取りをする者が見当たらないが,まずは広域ディーラーが率先することで,流れができるような気がする。

 値上がりすることを喜ぶ客などいない。だが,値上げを躊躇してGSが潰れても,「あのスタンド,いつも安くて助かっていたのに残念だな~」とは言ってくれても,「あの店長の家族大丈夫かな」とか「再就職先を見つけてあげなくちゃ」とはだれも思わない。値上げをするのは勇気がいることだが,客ではなく,家族や従業員の顔を思い浮かべて決断すべきだろう。

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