セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.74『女王の教室』

エンタメ・スポーツ

2005-08-29

 8月13日、土曜日の夜のこと。テレビで巨人―阪神戦を観ていると、8時50分ごろアナウンサーが「まもなく放送時間が…」と言い出した。えっ?いくら巨人戦の視聴率が低落しているとはいえ日テレ系列での中継、しかも伝統の一戦で、その日のスコアは3対3と白熱したゲーム展開だったにもかかわらず─である。しかし、私は一瞬の驚きの後、“やっぱり”と思った。そう、そのあと午後9時からは、あの「女王の教室」が始まるからだ。

 東京の公立小学校6年3組の担任教師 阿久津真矢は、成績の悪い生徒を雑用でこき使い、反発する子どもは徹底的に排除するという“恐怖政治”を行なう。そのいびり方の凄まじさといったら…。阿久津先生の正体は?彼女の支配に戦いを挑む生徒たちの行く手に待つものは?最終回は9月17日放送予定。

 それまで、「3年B組ナントカ先生!」のような予定調和の学園ドラマに馴染んでいた視聴者の衝撃は大きく、番組HPには「ひどすぎる。放送を打ち切るべきだ」という否定派から、「社会の厳しさを教える理想的な存在」という肯定派まで、様々な意見が空前の件数で寄せられているそうだ。悪魔のような女教師を演じるのは天海祐希。これまでの日本のテレビドラマには登場しなかった主人公をド迫力で演じている。この番組のプロデューサーは、当初「二十四の瞳」の大石先生のようなキャラクターを考えていたそうだが、「ドッジボールはいじめにつながるから禁止」だの、「授業中教室から出て行っても怒られない」などの事なかれ主義が蔓延している小学校の現状を知り、180度違う「女王」の誕生となったのだそうだ。

 阿久津先生の口癖は『いいかげん、目ざめなさい』─友人の裏切りや親の無理解、権力の厚い壁などにぶち当たる子どもたちに、薄笑いを浮かべながら言い放つそのセリフは、ガソリンスタンド業界にも浴びせられるべきだろう(かなり強引な適用)。

 自由化後の苛烈な価格競争は、もはや“共存共栄”などあり得ないことを私達に思い知らせている。セルフ時代を迎え、その激しさはますます増しており、かつては子羊のようにおとなしかった元売の100㌫出資会社は、いまや猛牛のように市場制圧を進めている。一方で、中小零細の特約店には、一方的に経営改善案を突きつけたり、商品代担保の積み増しを要求したりして、振るい分けを進めている。それでもなお、元売を信頼し、最後には助けてくれるだろうという“幻想”を抱いているスタンド経営者には、『いいかげん、目ざめなさい』─。

 同業者同士で、いわゆる「横のつながり」と称して、情報交換とは名ばかりの傷の舐め合いっこや元売の悪口言い合いっこに終始しているスタンド経営者や、「次代を担う若手」とか何とかおだてられて、元売の監視下での研修会やキャンペーンに参加し、マインドコントロールされつつある二世経営者のみなさんにも、『いいかげん、目ざめなさい』─。

 セルフを量販の手段と信じ込まされ、高コストの大型店舗を建設し、とめどなく出血する赤字は洗車や車検でカバーせよとの指図に唯々諾々と従っているスタンド経営者や、セルフをいまだに人間味のない、いずれは廃る“はやり病やまい”のようなものとタカをくくっているスタンド経営者のどちらにも、やはり、『いいかげん、目ざめなさい』─。

 私達の業界には、耳ざわりに心地よいことばかり聞いていて、現実の厳しさに目を向けず、自我に目覚めようとしない人々が結構いると思う。冷酷無比な阿久津先生のような人に渇を入れてもらうのも案外悪くないかも。

 余談だが、このドラマのエンディングで、素に戻った天海祐希がEXILEの曲に乗って楽しげにダンスを踊るシーンが実に素晴らしい。一度でいいから一緒に踊ってみたい…。

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