セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.75『カトリーナ』

社会・国際

2005-09-05

 むかし、私が中学生のころ、学校の近所に「カトリーネ」というあだ名のばあ様がいた。どう見ても、カトリーネなどというハイカラな名とはほど遠い、野良着姿のばあ様なので、同級生にあだ名の由来を聞くと、そのばあ様の本名が「鹿取イネ」、それで、カトリーネというわけでした。

 米南部に超大型ハリケーン「カトリーナ」が上陸するとのニュースを見ていて、そんなくだらないことを思い出したりしていたが、直撃を受けたルイジアナ州だけで死者が一万人を越えると言われており、「雨のニューオリンズ」ならぬ「泥水と略奪のニューオリンズ」と化した都市の映像を見ると、もはや笑い事ではない。ハリケーンや台風が年々大型化するのは、地球温暖化が大きな要因であるとの説が有力で、京都議定書を批准しない二酸化炭素排出大国に天罰が下ったのだという人もいるが、とにかく、一日も早い被災地の回復を願ってやまない。

 とりわけ、我々日本のガソリンスタンド業界にとって、「カトリーナ」により加速の度合いを強めた原油価格の上昇には、“もう勘弁してくれ”と悲鳴を上げたくなる。メキシコ湾岸に密集している石油施設は全米の石油精製の約五割をカバーしているそうだが、その大半がカトリーナによって操業停止に追い込まれており、大統領は「不要なガソリンは買わないでほしい」と、異例の「買い控え」を国民に呼びかけた。

 米国の大手石油会社は効率重視の経営を迫られた結果、利益率の低い精製部門の設備の更新・新設を控え、この三十年間、既存施設の能力向上で対応してきた。このため、施設は老朽化しているのに、稼働率は約95㌫にも達する。今回のハリケーンは、図らずも米国の石油精製の脆弱性を露呈させることになったと言える。

 一方、我が国ではつい先日、石油元売り5社が、2000億円を投じて精製設備の増強に乗り出すことを発表した。国内需要が頭打ちとなっている現状で、今後の成長を維持するために、大型投資によって価格競争力を高め、アメリカや中国向け輸出を増やすという事を目論んでいるのだそうだ。

 世界中の石油を買い占めている米国が「石油ショック」に見舞われているかと思えば、石油を100㌫輸入に頼っている日本が、そのアメリカにガソリンを輸出しようとしているとは、何だか変な話ではある。また、米国のガソリンスタンドでは、ハリケーン騒動に便乗したガソリンの大幅値上げが問題になっているが、日本ではコスト上昇分も満足に上乗せできないまま、ガソリンの安売り競争が繰り広げられている。これもおかしな話である。

 いずれにせよ、冬場に向けての灯油需要も見越して、石油価格はさらに上昇するとの見方が強い。日本では、ガソリン価格が上昇したからといって暴動が起きるようなことはないが、ドライバーは財布のひもをさらに引き締めることによって、これに対処しようとするだろう。“500㌔㍑売れば黒字”などという大馬鹿、じゃなかった、大型セルフスタンドは、需要の漸減現象の中で、“氷河期”を迎えた巨大生物のように、ますます存続が厳しくなってゆくだろう。

 原油価格上昇という前門の虎と、需要減退という後門の狼に同時に立ち向かわねばならなくなったガソリンスタンド業界が生き残る道は、ローコストセルフしかない。ハリケーンが迫っていても、大きな家に住んでいたり、たくさんの持ち物を所有していると、避難するのはなかなか難しい。あとに残してゆくものを惜しんでぐずぐずしていると、命取りになりかねない。また、そのような生活環境にいた人は、仮に避難しても、不便な避難所暮らしに耐えられないかもしれない。一方、小さな家で、簡素な生活を送っていた人は、失う物も少なく、すぐに避難行動を取れるうえ、避難生活にも比較的適応しやすい。迫り来る嵐に備えて簡素なライフスタイルを志すことは、知恵の道である。スタンド経営も同じだと思う。

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