セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.763『増税迫る』

政治・経済

2019-09-09

 来月から消費税が10㌫に上がる。過去2回,先送りとなったが,今度は観念せざるを得まい。政府は「リーマンショック級の景気失速が起こらない限り実施する」としている。じゃあ,増税直後に“リーマン級”の事変が起きたらどうするんだ?ということになるのだが,まあ,いまさらとやかく言っても詮無いことだ。ガソリンについて言えば,本体価格に,ガソリン税53.8円/㍑,石油税2.8円/㍑がくっついたものに消費税がかかる二重課税となる。これについては,石油業界はずっと前から文句を言ってきたが,今回も議論の俎上に乗ることすらなく,当たり前のように税金がかけられる。お上の理屈では,ガソリン税と石油税は石油会社が払うもの,消費税はガソリンを購入した消費者が納めるもの─つまり,ガソリンに限らず,商品やサービスの販売価格を決める際には,企業が負担するもろもろの税金コストを考慮して決められることが一般的なので,ガソリン価格だけが特別なわけではない,ということのようだ。

 ガソリン税の約半分25.1円/㍑は,’74年に道路整備五ヶ年計画の財源として「暫定的」に税率を上乗せしたものなのだが,5年ごとに反復延長を続け,今日に至っている。暫定税は2008年に1ヶ月だけ失効したことがあったが,あの時はすごかったですな。当時,暫定税率延長に参議院で多数を握る民主党が反対したためだが,何せ25円もガソリンが下がったのだから,お客様は大喜び。これによって,民主党は国民の支持を得,政権奪取に成功した。ところが,政権に就いた途端に,暫定税率撤廃の公約は反故になり,消費税率を段階的に引き上げる法案を可決させるに及んで,政権から陥落,その後民主党は消滅してしまった。ガソリン税を弄んだつけは大きかったということか。

 今回の消費税引き上げでは,軽減税率なるものが適応される。生活必需品を主な対象として,税率を据え置くというものだが,これがややこしい,というか笑っちゃう。例えば,医薬品は10㌫になるが,健康食品やサプリメントは8㌫になる。(逆じゃないかと思うのだが) すると,同じ栄養ドリンクでも「オロナミンC」は8㌫だが,医薬部外品の「リポビタンD」は10㌫になるんだって。軽減税率でよく話題になるのが,レストランでの飲食。店内で食べると10%だが,持ち帰りや宅配サービスなら8%になる。だが,ファーストフード店で食べ始めた矢先に“急用ができた。持ち帰ります”といっても2㌫分を払い戻してはくれないだろうし,逆に,持ち帰ろうとしたが,やっぱり店内で食べてゆこうと変心した客に,2㌫分を追加で請求することも難しかろう。店頭で対応するスタッフの苦慮する姿が目に浮かぶ。

 “自動車はぜいたく品。従ってガソリンを買う人は高額所得者”という時代遅れの思想に基づく日本の税制のもとでは,ガソリンが“生活必需品”として軽減税率の対象品目になることは万に一つもない。それどころか,今後の景気動向によっては「暫定的」に環境税だの何だのと税金を乗っけられるかも。「取れるところから取る」というのが徴税の要諦である以上,おとなしい石油業界はこれからもせっせと徴税マシンの働きをさせられることになるのだろう。

 さらに,今回の増税では,キャッシュレス決済に対するポイント還元事業という景気対策も行なわれるが,小売店側の反応はあまり芳しくないようだ。お財布がなくてもお出かけできる,なんてことは東京でも難しいようだ。経産省調査では,東京都の飲食店でもカードが使えるのは3分の1。カード加盟店でも加盟規約に反することを承知で,「ランチはカード払い不可」とするところもあるそうだ。飲食業の営業利益率は平均3.7%で,集客のために利益率を抑えるランチは,世界でも突出して高いカード手数料では採算が取れないのだという。利益率の低さでは引けを取らない我が業界はどうするか。波乱含みの増税まであと20日足らず…。

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