セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.764『石油離れ』

社会・国際

2019-09-16

 今月13日,国連のグテーレス事務総長は,先のハリケーンで甚大な被害を被ったバハマを訪問,記者団に対して「気候が,危機的な状況となっている。勢力が強いハリケーンが頻発しているのは,海水温が上昇しているからだ」と指摘した。同氏は予想よりも早く温暖化が進行していると危機感を強めており,「これはほんの始まりにすぎない。気候変動に対処するために行動しなければならない」と述べ,温暖化対策を急ぐよう各国に求めた。

 国連は今月,ニューヨークでの国連総会に合わせて,温暖化対策サミットを開き国際社会の機運を高めていくことにしているが,“総論賛成・各論反対”が常のこの手の会議では,せいぜい努力目標を決議するのが関の山だろう。仮に前例のない画期的な協定が結ばれたとしても,先に「パリ協定」から米国が離脱してしまったように,超大国の協力が得られなければたちまち画餅と化す。“人類の英知を結集すれば必ず解決できる”と信じる人は少なくないが,現実問題として,もはや地球を“修繕”することは人間には不可能だろう。

 温暖化の影響は,遠くバハマに目を向けずとも,日本各地で強大化している気象災害による凄まじい被害を見れば明らかだ。先日,千葉県南部を襲った台風の破壊力も,類例のないものだった。専門家は,進んだコースが西に50キロ程度ずれていれば東京や横浜でも暴風の被害が拡大していたほか,東京湾で数メートルの高潮が発生し大きな影響が出ていた可能性を指摘している。次は,どこでどんな災害が起きるのか。私たちは,毎日怯えながら暮らすよりほかなさそうだ。

 とはいえ,首都圏での災害だし,木更津には自衛隊の駐屯地もあるのだから,インフラの復旧は比較的早く進むだろうと思っていたら,さにあらず。送配電設備が想定外の規模で損傷したうえ,大量の風倒木が作業を阻み,一週間経ってもまだ全面復旧に至っていないという。何もかも電気がなければ動かないという事を改めて思い知らされた被災地の人たちの困窮した状況をニュースで見ながら,「気の毒なことだなぁ…」とつぶやくことしかできない自分は本当に役立たずな人間だなと痛感する。

 そうこうしていたら,今度はサウジアラビアの石油施設が無人航空機による攻撃を受け,サウジの原油生産の約半分がストップしてしまったというニュースが舞い込んできた。(14日) これは世界の日量生産の5㌫に匹敵するそうだ。当然,週明けの原油市場は急騰,米国は備蓄している石油を放出するらしい。日本の石油会社は「影響は限定的で,あっても原油価格が少し上がる程度」などと冷静に対応しているが,同様の攻撃がさらに続くようだと,米国が“真犯人”と名指しするイランとの戦争に発展しないとも限らない。

 来月から消費税が上がるという矢先のこの事変。エコ化の潮流と相まって,ますます石油離れが進みそうだ。以前は,埋蔵量が枯渇するという「ピーク論」が喧伝されていたが,いまでは需要のほうが先に頭打ちになるという「逆ピーク論」のほうが現実味を帯びてきた。早ければ2030年代後半と分析する専門家もいるが,GS業界は,すでに“石油離れ”をしっかり感じ取っている。いくら安売りしたって,灯油が真夏に売れないように,ガソリンも以前のように減らないんだから売れるはずがない。ただし,近年の猛暑で“湯気”となって消えてゆくガソリンだけは増加しているけれど…。(苦笑)

 しがないセルフスタンドのおやじが,こんなことをグダグダ書いても何にもならないことはわかっちゃいるけど,アマゾンの森林は燃え続け,南極の氷山は溶け続け,戦争やテロは一向に止む気配がない…ニュースを観るのが怖ろしいきょうこの頃だ。同時に,化石燃料を売って生計を立てている者として,なんだか申し訳ない気持ちにもなってしまう。

コラム一覧へ戻る

ページトップへ