セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.805『カフェ?!』

GS業界・セルフシステム

2020-08-10

 今月8日,出光興産とデルタ電子は,複合型EV充電の新たなサービスモデル「Park&Charge」を検証する事を目的とした実証店舗「Delta EV Charging Station」 を横浜市にオープンさせた。デルタ電子のHPによれば,『スマートフォンひとつで電気自動車の充電・放電操作も支払いも完了。待ち時間は併設のカフェでこだわりのスペシャリティコーヒーを飲みながら,ゆったりとしたひとときを過ごす…。デルタの提案するこれからのEV充電ステーションのスタイルです』とのこと。

 店舗は横浜スタヂアムの近所の出光GS跡地を改装したものだが,GSというイメージを払拭するため出光ロゴはなく,オシャレな外観。900㎡の敷地内に合計6ヵ所の駐車場,4ヵ所のEV充電器が設置されている。日産「リーフ」が,急速充電で40~60分ぐらい。そのあいだ,横浜公園や山下公園あたりを散策していただくも良し,店内のカフェでくつろいでいただくも良し…『新たな顧客体験の創出に取り組みます』(出光興産HPより)というのだが…。

 “洗車中にカフェ” “点検中にカフェ”“整備中にカフェ”…相変わらずというか,性懲りもなくというか,「カフェ併設」なんて,これまで散々試してきてまったくモノにならなかったではないか。しかも,このコロナの時代に。あくまで“実証店舗”という位置付けだが,それならそれでもっと尖んがったことをやってみても良かったんではないか。例えば何をやればいいかって?う~ん…わかりません。(汗) とにかく,コロナウイルスによって人々の行動形態は変容してしまった。「充電しているあいだにカラオケ」,「充電しているあいだに筋トレ」,「充電しているあいだにマッサージ」…どれもダメ。そもそも「充電しているあいだに…」という発想ではアカンのじゃないか。「…しているあいだに充電」,つまりあくまで充電施設はサブ機能として併設されるものなのだろう。

 “そんなこと言っていたら,いつまで経ってもEVインフラが展開できない”というのであれば,いっそのこと電気を“宅配”すればいいではないか。福島原発の事故をきっかけに,電源車なるものの存在がクローズアップされた。第一原発で全電源喪失という事態が起きた時も,仮設ポンプを動かしたのは電源車だった。また,映画などのロケ撮影や,イベントなど臨時に電力が必要な際にも,電源車が用いられる。これをEV向けに改造し,スマホアプリと連動させて指定の時間に指定の場所へ充電しに行けば,需要家は大助かりではないだろうか。ただし,価格は1台数千万円から。元が取れんな。

 ウィズ・コロナ時代を迎え,EVは普及するのか,後退するのか─。ソーシャルディスタンスの確保のため自動車による異動が増加,環境への関心の高まりと相まってEVは順調に台数を伸ばすだろうという見方もあれば,所詮EV普及はどの国も補助金次第で,コロナ禍で財政が悪化する中,EV関連予算は縮小せざるを得なくなるという見方もある。そもそも,失業者が急増し,収入が激減しているご時世に,お高いEVに乗ってお出かけし,まったりとカフェでお茶しながら充電を待つなんて優雅な生活ができる人がどれほどいるだろうか。


 しかし,ドイツでは,すべてのGSにEVの充電スポットの設置が義務付けられることになった。EVの充電に関する懸念を解消し,消費者の需要を喚起することを目的としたこの施策は,ドイツ政府によるコロナ禍における経済再生計画の一環として実施される。また,中国では今年末までに,約15億㌦を投じて国内に20万台のEV充電器を設置し,その充電器から収集されるデータを活用した新たなユーザーサービス事業を創出するとしている。やはり,EVの普及は,「ポストコロナ」を視野に入れた国家プロジェクトとして取り組まないと進んでゆかないのだろう。いまだカフェ併設店をオープンさせて喜んでいるようでは…。 

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