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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.816『コロナの年末年始』

社会・国際

2020-10-26

 『政府は23日,新型コロナウイルス感染症対策分科会を開き,帰省や初詣など人が集まる機会が増える年末年始の感染防止対策として,休暇の分散取得を進めるべきだとする専門家の提言をまとめた。来年は月曜日となる1月4日の仕事始めが想定されるが,初詣の集中を避けるため,政府は同11日までの休暇延長などの措置を民間に呼び掛ける』─10月23日付「産経新聞」。


 仮に12月25日金曜日に仕事納めとなれば,実に17連休。その間に,分散して休みを取り,なんとか“第三波”を引き起こさないようにしたい,ということなのだろうが,果たして思惑通りに行くものか。新年を迎えて一週間も経ってから初詣に行ってたんじゃご利益がないんじゃないか?なんてことをマジで心配している人は結構いるらしい。


 今年は大変な疫病に見舞われたとあって“家内安全・無病息災”への願いが例年の何百,何千倍も増していることは容易に理解できる。これまで,参拝などしなかった人ですら“来年は行ってみようか”となり,参拝者数が増加するのではとの見方もある。まさに“困った時の神頼み”現象と言える。


 古来,人類は自然災害や伝染病と闘ってきた。見えないもの,制御できないものへの畏怖の念から,洋の東西を問わず,神仏をなだめ,禍いを退散させようと試みてきた。科学技術文明が全盛の現代においても,多くの人々の心理はむかしとさほど変わっていないのではないか。いやむしろ,合理的思考が支配的な世の中だからこそ,人々は霊的な事柄に対する渇望を一層強くしているのかもしれない。


 ある調査によると,寺社仏閣をもっとも多く訪ねている職業は「会社役員・経営者」で,80㌫もの人が寺社仏閣によく行くと答えているそうだ。“経営の神様”松下幸之助は京都府・岩清水八幡宮を,“海賊と呼ばれた男”出光佐三は福岡県・宗像大社を崇拝していた。IT企業の経営者の中には,意外にも神頼みをする人が多いと聞いたこともある。例えば, ソフトバンクグループの孫正義会長は年2回,石川県の金劔宮という神社への参拝を欠かさないという。


 コロナのような予測不能な出来事が起こればなおのこと,見えない「何か」にすがろうとするのか。あるいは,今日までの成功は自分ひとりの力ではなく,神様が助けてくれたからだという感謝の気持ちゆえなのか。はたまた,金儲けという世俗的な行ないへの大義名分を求めてそうするのか。神様が自分の願いを聞いてくれるなんて期待しているのではなく,とにかく,不安な気持ちを少しでも落ち着かせようとする一種のリラクゼーションと捉えている人も少なくないのでは。


 パンデミックという人類の危機に,宗教はどんな役割を果たすべきなのか。記憶に新しいものに,韓国の新興宗教団体における集団感染がある。結果,教団の代表がメディアの前で土下座して謝罪するという事態にまで発展した。世界のほとんどの宗教が,特定の場所に集合して礼拝をささげるという崇拝形式を取っており,これが感染を拡大させている。心のよりどころであるはずの宗教が,聖職者が科学を無視して判断を誤れば,集団感染のリスクを招く怖さを突きつけた。

 しかし,飲食店同様,多くの宗教施設にとって,礼参拝の自粛は“お客さま”の減少を意味する。最近はオンラインで献金できる寺院や社殿が増えているそうだが,それでも献金額は激減し,今後は,閉鎖を余儀なくされるところも出てくるだろう。やはり「密」を避けながらも,これまでどおりお参りに来てもらいたいというのが本音だろう。年末年始は,観光業界のみならず,宗教界にとっても存亡を占う17日間になるかもしれない。

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