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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.825『トム・クルーズ激怒す』

社会・国際

2020-12-28

 1996年の米国映画「ミッション・インポッシブル」。トム・クルーズ扮する秘密諜報組織「IMF」のエージェント,イーサン・ハントの活躍を描いたアクション映画で,世界的なヒットとなり,以降シリーズ化されてきた。現在7作目が撮影中なのだが,その現場である事件が起きた。ロンドン郊外での撮影で,フィジカルディスタンスを保たず作業をしていた二人のスタッフにトムがブチ切れ,罵声を浴びせたのだ。その時の音声が隠し録音され流出した。こんな感じ─。

 「みな俺たちを見込んで映画づくりをまかせてくれてるんだ。これで仕事が生まれて食いつなげる人が何千人もいる! わかってるのか,この●※■▽め! こんなのは俺の見ている前で二度とやるな!ルールを守らないやつは即クビだ!クルーのだれかひとりでも破ったら連帯責任。おまえも,おまえも,そこのおまえもだ! 謝っても無駄。謝るのは俺にじゃない。業界シャットダウンで家を失ったすべての人に謝れ! いくら手を突いて謝ったところで温かい食べ物が食卓に戻るわけじゃない。子どもを大学に通わせるお金も戻らない。わかるか!前にも言ったはずだ。それで守れないんなら,出ていけよ! 一部の人間のためにこの映画をシャットダウンさせるわけにはいかないんだ!」─。(●※■▽はダーティーワード)

 この作品については,コロナウイルスの感染爆発によって,今年2月にヴェネツィアでの撮影が中止になったのを皮切りに,幾度も製作が中断し,プロデューサーも兼ねるトムのストレスも最高潮に達していたのだろう,とメディアは報じている。この出来事のあと,5人のクルーが現場を去ったとのこと。

 『伝えたいことを伝えるのには,もっと良いやり方がある』とか『自分の部下をこんなふうに叱るなんて,完全なパワハラだ』など非難の声が挙がる一方,肯定的な意見も多く寄せられているという。「ロサンゼルス・タイムズ」のコラムニスト,M・マクナマラは,言われる側は辛い思いをしただろうし,もっと優しい言い方があったはずだとしながらも,パンデミック対策のリーダーやほかのセレブが優しくメッセージを伝えても効果がなかったことを指摘し,『社会的距離を取らなかったことで,人の生活や命が危険にさらされるのかもしれないということを,トム・クルーズの叫びのように,本当に怖い形で思い知らされるのは良いことではないか』と書いている。

 確かに,どんな世界でも,“叱られて学ぶ”ということは多々ある。無論,どんなにまっとうなことでも,罵声を浴びせたり,暴力を振るって教えようとするのは間違いである。一方で,昨今,“ほめて育てる”ことがやたらと奨励されているためか,必要な矯正や戒めを与えることさえはばかられるようになったとも思う。『懲らしめを愛する者は知識を愛する者であり,戒めを憎む者は道理をわきまえていない』という格言もある。愚かな事をしたり,しそうになったりする時,それを正してくれる人は,真の友人であり味方なのだ。

 今年一年,コロナ禍の世界にあって,売上げが激減し悲鳴をあげている幾多の業界を横目に,GS業界は営業自粛要請されることもなく,安穏と過ごさせてもらった。先日も同業者と,「去年までは,“GS業界なんてホント割が合わないな~”と思ってたけれど,いまは“GS業界でよかったな~”と思えるよね」と話していたのだが,その有難味がいまだ分かっていない●※■▽なGS経営者には,トム・クルーズに叱ってもらいたい。こんな具合に─。

 『これからガソリンはますます売れなくなってゆくんだ! この業界で食いつないでいる人が何千人もいる! わかってるのか? いくら安く売ったって昔のようには売れないんだ! わかるか! 前にも言ったはずだ。安売りするな! それが守れないんなら,出ていけよ! 一部の人間のためにこの業界をシャットダウンさせるわけにはいかないんだ!』─。というわけで,今年も駄文・拙文にお付き合いいただきありがとうございました。来年もよろしく…。

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