セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.85『組合は必要か』

社会・国際

2005-11-21

 酒販業者で作る「全国小売酒販組合中央会」の年金事業「酒販年金」の運用資金が焦げ付いた問題で、加入者が支払った掛け金のうち、140億円が返還されないことになり、生計に打撃を受けた加入者が怒りの声を上げている。全国の酒屋さんがコツコツと積み立てた年金を、ずさんな運用でパーにしてしまったという何とも気の毒な話なのだが、そのうちの一億四千万円が使途不明となっており、どうやら政治家への裏献金にまわされた可能性があるというのだ。

 かつては、酒店の新規出店は「距離基準」や「人口基準」によって規制されていたが、1998年3月に規制緩和が閣議決定し、2001年1月に距離基準が、2003年9月に人口基準がそれぞれ廃止された。おかげでいまでは、近くのコンビニで気軽にビールを買えるようになった。中央会は、こうした急激な規制緩和に歯止めをかけるため、与野党の有力議員らへの陳情活動を展開していた。裏献金はこの課程で政界工作として配られたと見られている。

 まあ、こうなると酒販組合の組合員さんへの同情もいささか冷めてしまう。規制緩和をやめさせよう、遅らせようとすることに血道をあげている業界団体など潰れてしまったほうが世の中のためと言うものだ。新規参入者を排除し、既得権益を守ろうとするのは、怠け者のやる事で、業界の発展にも何ら寄与しない。政治家にカネを渡して何とかしてもらおうなんて見下げた行為である。

 では、我がガソリンスタンド業界はどうかと言えば、団結して規制緩和や新規参入に抵抗しようなんて発想はとうの昔に廃れて、いまでは、厳しい自由化の荒波の中で各々が自己責任を全うしようとしている。まあ、中にはいまだに組合の力で“15円マージン復活を実現させよう”などという妄言を繰り返している方々もいらっしゃるようだが、大多数のスタンド経営者は、組合などにはさっさと見切りをつけ、仕入れコストの見直しや独自サービスの企画、新規事業の展開など様々な努力を傾けて生き残ろうとしている。

 かつては、保守的・閉鎖的だったガソリンスタンド業界が、今日、このような様相を呈するようになったのは、言うまでもなく、1996年3月の特石法撤廃、1998年4月のセルフ認可に負うところが大きい。この間に、組合幹部がこれを阻止しようとして政治家に陳情や工作をしたかどうかは知らないが、はっきり言えることは、規制が緩和され、新規参入が活発となり、組合が弱体化したことにより、ガソリンスタンド経営は、厳しいけれども、やりがいのある業界になったということだ。

 いまでは、各々の知力を傾けて、自由な発想でスタンド経営に取り組めるようになった。徹底したローコストで安売りしても良し、異業種とのコラボレーションも良し、とにかく、セルフ化によって、これまで横並びだったガソリンスタンドの経営スタイルは、劇的に多様化していった。これからも、様々なアイディアを持ったスタンド経営者が現われるに違いない。

 もちろん、規制緩和は良い事ばかりではない。いま業界を騒がせているジョイフル本田のようなカテゴリーキラーの進出によって、既存業者が吹き飛ばされてしまうこともあるかもしれない。だが、それでも、業界全体としてのダイナミズムは保たれるべきだと思う。変化を恐れ、それを拒むようになった時、その業界の衰退が始まるのだ。

 酒販業界も、ガソリンスタンド業界も、今後まだまだ大きな変化に見舞われることだろう。それがどのようなものであれ、個々の経営者が対処してゆくしかない。その責任を放棄して、自分の店の将来や老後の夢を、よりにもよって組合なんかに託そうなどとはゆめゆめ考えぬように。そして、そもそも組合年会費が本当に必要なコストなのかどうかも、これを機によく吟味してみるべきではないだろうか。

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