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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.851『デマ』

社会・国際

2021-06-28

 80代の私の母も先日2回目のコロナワクチン接種を終えた。翌日37度超の発熱があったものの,その後著変なくコロナ禍にあって平穏な毎日を過ごしている。とりあえず一安心といったところだが,そのワクチンをめぐる不穏な動きが一部で見受けられる。ワクチンが人口削減のための生物兵器だとする陰謀論や,ワクチンがヒトDNAを変えてしまうといったデマがSNSなどで広まっているのだ。

 無論,そのように主張している人の多くは,それをデマとして流布しているのではなく,大真面目で論じているわけだから,頭ごなしに否定したり馬鹿にしたりすると,相手はますますエキサイトしてしまうので,この手の人に対しては“ふ~ん,なるほどね~”と相手を立てつつ,さりげなく話題を変えるのが賢明なのだそうだ。(苦笑)

 先日観たテレビ番組で,米国のワクチン接種を頑なに拒む人々について報じられていたが,ワクチンに不信感を抱かせる様々な情報が彼らに影響を及ぼしているようだ。そのひとつに「ワクチンを接種してない女性が接種済みの男性との性交渉により不妊症になる」というのがあるそうだ。米国の医学会などは「ワクチンが生殖能力の喪失につながりうるとの証拠はない」としてこれを否定したものの,もしかしたら“数年後か十数年後には”という不安を完全に払拭できるわけではない。つまり,「ワクチンは未来永劫 絶対安全」という主張も安易に信じるべきではないといえる。

 とはいえ“そんなアホな”と笑ってしまう奇想天外な情報も。その最たるものは「ビル・ゲイツ陰謀論」。ご存知の方も多いと思うが,簡単に言うと,マイクロソフト創業者で大富豪のゲイツ氏が,コロナウイルスを広め,次いでワクチン接種の際に極小マイクロチップを体内に埋め込み,将来5G電波によって生殺与奪権を握ろうとしているのだというおはなし。大真面目にこの陰謀論を語る人たちは,「ゲイツはコロナ禍が始まる前からモデルナやアストラゼネカの大株主になっていた」とか,「コロナ禍後にゲイツの総資産は10兆円から13兆円に増加した」などの事実がその証左だと主張している。この件に関する米国の世論調査では,共和党支持者の44㌫,民主党支持者でも19㌫の人が「真実だと思う」と回答していることに驚くと共に,FOXニュースの視聴者ではたった50㌫しか「真実」と思っていないことにも驚かされた。(笑)

 むかし,007シリーズのパロディで,世界征服をもくろむ科学者が地球の引力をコントロールできる機械を開発し,世界中のアスピリンを買い占めた上で人類を無重力状態にして頭痛を引き起こさせるというナンセンスコメディを観たことがある。今回の陰謀論はそんな類の話だと私は思うのだが,果たして笑い過ごしていればいいのかどうか─。

 かつて,「地球上で最も優秀なのはゲルマン民族であり,ユダヤ人は劣等民族。よってユダヤ人は駆除しなければならない」とベルリンの街頭でアジ演説をぶっていた小政党の党首が,社会不安に乗じて独裁者となり,やがて世界を地獄に変えていった。今日,コロナ禍で失業したり,目標を失ったりして孤立感や挫折感を深めている人たちは少なくない。社会への不満や他者へのねたみなどを抱えて悶々としていると,荒唐無稽な話を信じ込んでしまう危険性が高いと社会心理学者たちは警鐘を鳴らしている。

 また,大多数が信じているから正しいとも言えない。理由が何であれワクチン接種をためらう人を差別・迫害することは,陰謀論を信じる人たちと同じ思考構造だと言えまいか。大切なことは,常に冷静さを保ち,平衡の取れた見方を持ち続けることなのだが,それは決して容易なことではない。情報発信にも細心の注意を。先日,なじみのお店で名古屋名物「味噌煮込みうどん」を食べ,帰り際に店主に「どうですか?」と尋ねると,「お昼はともかく夜はさっぱり。ホント困ってます」とのこと。「そうなんだ…コロナウイルスには味噌麹が効く!なんてフェイクニュースでも広めたらどう?」と軽口をたたいたら,「いいですねそれ。和田さん,ブログに書いて広めてくださいよ」─。


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