セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.86『コストダウンは悪か』

GS業界・セルフシステム

2005-11-28

 セルフスタンドの工事を進める中で、最も大きなストレスとなるのは、消防当局からの指導に対応することである。例えば、機器や機材の使用において、愛知県の消防署では認められていることが、別の県では認められなかったりすると、申請書類を修正しなければならず、着工予定日も遅れてしまう。当然イライラが募る。もちろん、安全性に関する指導であれば、これに即座に従うのは当然のことなのだが、やれ監視カメラの高さがどうの、インターホンの取付位置がこうのと、重箱の隅をつつくような“指導”には、首を傾げざるを得ない。とはいえ、相手はお上だから、逆らうだけ無駄。ぶつぶつ言いながらも、向こうの気に入るように変更するだけである。

 消防完成検査の日ともなれば、計量機、消火設備、電気機器などの各担当者と共に、検査官御一行を恭しく迎え入れ、粗相のないよう説明や試運転を行なわねばならない。何度やってもこの日が一番緊張してしまう。許可された計画通りに行なったわけだから、堂々としていれば良いのだが、対向車線からパトカーが来ると意味もなく緊張してしまうように、消防官の制服を見ると何だか落ち着かないのである。そんなわけだから、完成検査が無事終わり、検査済み証が頂けた時には、このうえない安堵感に包まれるのだ。

 ガソリンスタンドの改造工事でこの始末なのだから、もっと大きくて複雑な構造の建築物を建てるにあたっては、役所との打ち合わせは本当に大変なのだろうなと思っていたら、何のことはない、役所は民間の検査機関に委託してほったらかし、そのうえ検査会社はロクに書類も見ずに偽造設計図に判子をついていたというのだから、セルフ改造工事より、マンション建設のほうが簡単だったというわけだ。やってられねぇよ…。

 欠陥マンションの設計士、建築主、建設会社、検査機関─だれもが、責任をなすりつけ合い、“オレは被害者だ”と言わんばかりだが、背後に政治家の影もちらついたりして、この問題、まだまだ決着しそうになさそうだ。ところで、オレの住んでいるマンションは大丈夫かなぁ…。

 そもそも、なぜ、マンションの構造計算を偽造し、鉄筋スカスカのマンションを建てることになったかといえば、関係者に“コストダウン”という共通した圧力が存在していたからだと言う。こんな犯罪行為の潜在的理由が、コストダウンというのは腹立たしい。コストダウンとは、あくまで無駄を省くことで予算を抑えることであり、人体に例えれば贅肉を落とす事に相当する。今回の欠陥マンションのように、人体になくてはならない背骨や肋骨を取っ払うようなことをコストダウンと称されてはたまったものではない。

 ガソリンスタンドにおけるコストダウンとは、スタンド本来の機能を保持させながら、設備、運営、保守など様々な分野で効率化を図ることであり、それにより安全性も一層高まるものでなければならない。コストダウンとは高い倫理観に裏打ちされた高度な経営技術なのであって、“安かろう、悪かろう”といった低俗な論理とは一線を画すものなのだ。

 ところで、今回の欠陥マンション事件の被害者は、言うまでもなく住人のみなさんである。資産価値ゼロの不動産と住宅ローンを背負い込み、恐ろしいやら、腹立たしいやらで夜も眠れないかと思うと気の毒である。都心周辺で、100平米を越す新築マンションを、3千万円台で購入できたと喜んだのも束の間、奈落の底に突き落とされてしまったわけだ。こうなると、あまりにお値打ちな話には、まず疑ってかからねばならないということになろう。もちろん、私の提案するローコスト・セルフシステムについてもとことん疑ってもらって結構。よーく見極めていただいたうえで、悔いのない賢明な選択をしていただきたい。

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