セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.867『補助金貰って買ったモノ』

GS業界・セルフシステム

2021-10-18

『自然災害で停電が発生した場合でも営業できるよう,ガソリンスタンドに自家発電機を設置する国の補助事業について会計検査院が調査したところ,実際に台風で停電した102店のうち14店が,停電から1日以内に営業を再開していなかったことが判明した。検査院は14日,資源エネルギー庁に改善を求めた』─10月14日付「毎日新聞」。

 2016年の熊本地震で多くのGSがで停電で営業できず,混乱したことを機に,国は17~20年度に,自家発電機を購入したGSに上限250万円で全額補助する事業を実施,4年間で全国のGSの半数近い1万3千件余りのGSが導入し,補助総額は302億円に上った。補助金を受け取ったGSは「住民拠点サービスステーション」として,災害停電時に営業することが事実上義務付けられている。

 ところが,検査院が17~19年度に補助を受けた店舗を調べたところ,8府県の102店で台風によって半日以上の停電が起き,このうち千葉,和歌山,長崎,鹿児島,沖縄の5県の14店は,営業可能だったにもかかわらず,1日以内に営業を再開していなかった。この報道に対し,ネット上では“補助金返せ”“店名公表せよ”などの批判が寄せられている一方で,“設備だけ作っても災害時に人が来れるのか問題。GSの従業員は自衛官や消防士じゃない”との意見も。

 確かに,発電設備さえあれば営業できるわけではない。肝心のガソリンをタンクローリーがちゃんと届けてくれなきゃ,ただでさえ苛立って並んでいる客からブーイングを食らうことだろう。それに,セルフGSでも,パニック状態のなか押し寄せる客と対峙するのは,身の危険を感じる。災害を経験したあるGS経営者は,もうあんな経験したくないから,発電機なんてタダでもいらないとおっしゃっていた。

だが,同じ報道で指摘されたもうひとつの事案については看過できない。『閉店や事業継承の際,46店が本来は必要な承認を得ず,無断で(自家発電機を)財産処分していたが,消防庁はこれを把握していなかったため,検査院はこれらについても改善を要求した』─。

 補助金もらって購入・設置した設備を勝手に売却したとすれば,これは補助金の不正受給として罰せられるんじゃないだろうか。まあ,GS業界に限らず,補助金事業の無駄は枚挙に暇がないが,思い出すのは,いまから12年ほど前, 当時の民主党政権のもとで行われた政府の事業仕分け作業において,地下タンクの老朽化によるガソリン漏洩事故を防ぐ目的で新しいタンクへの交換費用を国が助成する補助金48億円が「廃止」と判定された際,「仕分け人」の一人から“泥棒に追い銭”との言葉を投げつけられたことだ。

 この論議の中でエネ庁の役人が「GS業界は収益力が低く,補助金で助けてあげないとどんどん廃業する業者が出て,地域経済にも支障をきたす」と説明したところ,「それはビジネスモデルに問題がある」と一蹴されてしまった。採算を顧みずに事後調整頼みで経営を続け,いよいよタンクが古くなったら今度は税金に頼る─。“泥棒”は言い過ぎかもしれないが,甘ったれるなと叱られても仕方がない,これからは設備更新ができる体力を蓄えられるよう採算販売を,とこのコラムに書いた。

 今回のような事案が報じられると,やっぱりGS業界は“泥棒”だったという汚名を着せられ,GS業界向けの補助金事業は,今後縮小に向かうかもしれない。経産省は2022年度予算の概算要求で,経営危機に直面している過疎地のGS向けの補助金に14億円を要求するとのことだが,先細りが確実なGSを延命させるよりも電気自動車の購入や充電スポットの整備の方に振り向けたほうが,住民の足を確保する上では有効ではないか,との指摘も。お役所もどんなものに補助金を出すか,効果性をよく考えないといけない。血税なんだから。それよりも,GS業界に関しては,補助金なんか出さなくていいから,原油価格の高騰が収まるまで,13年前みたいに暫定税率を停止してもらえませんかね。業界にとってカンフル剤となるし,国民からの受けも抜群にいいと思いますよ…。

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